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2021.05.10

生理のストレスにピリオドを。生理と普通の日の境目をなくす吸水型パンツPeriod.の挑戦

with who?

株式会社Period. 代表取締役

寺尾彩加

1994年生まれ。新卒で動画制作会社LOCUSに入社し女性商材の動画制作や広告プランニング、広報業務に従事。業務の中で海外のトレンドリサーチをしていたときに生理の日にショーツだけで過ごせる吸収型パンツ「THINX(シンクス)」と出合い、日本に広めたいという思いからPeriod.を創業。吸水ショーツブランド「ピリオド(Period.)」をプロデュースする。

人生で約40年もの間、月に1回、合計500回近くおとずれるものーー生理。

生理がある人にとって、自分の心身の健康を考える上で、生理と向き合うことは避けては通れない。

ではいかにして向き合うか。その答えの1つを提供しているのが、吸水型パンツPeriod.だ。

Period.は単なるパンツではない。生理をきっかけにや自分の心と体の状態を教えてくれ、目を向けさせてくれる。いや、きっとそれだけでもない。もっともっと大きな可能性がある、世界を変えるきっかけにもなるアイテムだ。

生理がない筆者にすら、そんな期待を抱かせてくれるPeriod.。「このパンツのよさを伝えたくてしょうがない」と嬉々として語るPeriod.創業者寺尾彩加さんに、吸水型パンツの魅力を思う存分語ってもらいました。

無意識に抱えていたストレスに気づかせてくれた吸水型パンツ

寺尾さんが吸水型パンツを使い始めたきっかけはなんだったんですか?

前職で動画広告を制作していた関係で海外のトレンドをよく調べていて、2015年頃からアメリカを中心にフェムテック(註1)市場が注目され始めていたんです。そのトレンドをつくりあげたブランドが、NYで吸水型パンツを展開していた「THINKX」。創業者がインタビュー記事で「生理のときに、パンツだけで過ごせる」と語っていて、「そんなこと本当にあるの?」とすごく感銘を受けたことがきっかけで吸水型パンツが気になり始めました。

それで実際にアメリカから1つ取り寄せてみたのですが、全然届かなくて(笑)。「途中でロストされたのかな…」と思いつつようやく届いたのが、ちょうど生理が終わったタイミング。次に生理がくるのは1ヶ月後。早く試してみたいという好奇心からか、人生で初めて「次の生理来ないかな」と思ったんです。それまで毎月「こないで」と思っていた生理に対して、真逆のことを感じるようになったのもすごく驚きでした。

註1:female(女性の)+technology(技術)の造語。女性特有の健康問題を技術を用いて改善するもの

実際に使ってみてどうでしたか?

意外と自分の意識していないところで、たくさんストレスを受けていたんだと気づくきっかけになりました。例えば生理が始まりそうなタイミングではナプキンをつけるか、普通のショーツで過ごすかどうか悩むんですよ。それで「今日はまだこなさそうだから、普通のショーツでいいや」と出かけたときに限って生理がきたりして。すると今度は「急いでコンビニに生理用品を買いに行かないと」とか、「ストックがデスクにあるけど、トイレからどうやって戻ろう」みたいなことを考えていました。

生理が終わりかけのタイミングでも、「もう少しナプキンにしておくか、普通のショーツに切り替えるか」で結構悩みます。保険をかけてナプキンをつけていったら、1日何も出ず、ただ暑いだけという結果に。夏とか特に嫌になりますよね。そんな日は帰宅後のお風呂の中で、「今日も1日無駄な配慮で不快な思いしたなあ」なんてことを思ったりしていました。


英語のPeriodには「生理」「終止符」の2つの意味がある。「Period」の最後に「.(ピリオド)」がついているのは、今の生理の常識に終止符を打つという想いが込められている。

そういったストレスが吸水型パンツでなくなったと。

そうなんです。このパンツで生理のときに感じていたストレスを全部なくせるじゃんと。他にも、ナプキンを使わなくてよくなったことで、公共のお手洗いにあるサニタリーボックスに触ることがなくなったんですよ。

それまで気にしたことはなかったけど、振り返ると触りたくないものだったんだなと。そういったものに触れる必要がなくなったり、そもそもサニタリーボックスがあるかどうかを確認することもなくなって、外出時の心配が減ったことも嬉しかったです。

本当に1枚のパンツがいろんなストレスを解放してくれたんですね。

あとはパンツを通して、「そもそも生理ってなんであるんだろう」と考え始めるきっかけにもなりました。それまでどこか自然現象として起こることだと、何も考えずに受け入れていたんです。「生理とは何か」に立ち返ることで、自分の健康について見つめ直すことができて。

例えば、子宮頸がんってよく話には聞くけれど、心のどこかで自分はならないだろうと思っていました。でも調べていくと「やっぱり検診しないと」と思ったり、今は防げるワクチンがあることを知ることもできたんです。

生理や自分の体のことなど、いろんなことを知る入り口となったのも、吸水型パンツだったんですよ。そこにすごく可能性を感じています。自分の身に毎月起こる生理について少し考えたり知るだけで、体のことを知る機会になる。同時に、日本の女性の健康って世界的にみてどうなんだろうとか、いろんなことに目を向けるきっかけにもなる。

こんなに気づきを与えてくれるアイテムって、それまでの人生で出会ったことがなくて。もちろん小難しいこと抜きに、単純に使ったら超快適だったこともあります。こういった感動を伝えたすぎて、起業しました。

寺尾さん自身の気づきが、Period.のコンセプトにもある「自分を制限する壁は自分の中にある」にもつながっているんですか?

わたしたちが公式サイトをオープンしたのが2020年5月。そのころは、生理のときのアイテムといえば紙ナプキンかタンポン、月経カップでした。吸水型パンツは海外のトレンドに詳しい人や生理用品関連の仕事をしている人には知られていたのですが、流行りものが好きですぐに試してみるタイプの人たちですら、「これって本当に漏れないの?」と嫌煙して買わないことが多かったんです。試してみるまでのハードルが高くて。

でも、「漏れるかもしれない」という不安と向き合って、「漏れても多少はしょうがない!」とリスクを取って試してみた先にある世界が、完全に別世界だと思うんですよ。だから自分でこれはダメだと壁をつくらないで、チャレンジしてみてほしい。既存のものしか選択肢がないという思い込みを変えて、まったく新しい体験を提供したい。そんな想いから「自分を制限する壁は自分の中にある」ということばをコンセプトに掲げています。

↑Period.のコンセプトメッセージ

わずかなスペースに凝縮された「漏れない」ための工夫

吸水型パンツに関して、Period.ならではのこだわりはありますか。

まずはやっぱり履き心地のよさです。1日中履いて過ごすものなので、履き心地が悪いととても苦痛。それから、漏れに備えられるよう細かい設計をしているところにもこだわっています。

具体的には鼠径部のあたり、つまり股と太ももの隙間から漏れ出てしまうことが多いのでそれを防げるよう設計をしています。パンツの真ん中にある、クロッチと言われる厚みがある部分で吸収。両端にはステッチ(縫い目)を入れて、中心から広がりながらだんだん吸収していくようになっています。


また、2020年11月にリニューアルした商品は表面に速乾吸収素材を使っています。すぐに乾くことで水分と肌が触れる時間が短くなり、かぶれを防げるような仕様になりました。

現在制作中のパンツは、吸水部のクロッチ幅を短くして、より肌にピッタリと合う仕様にすることで横からの漏れを防ぐようにする予定です。これまでの商品は肌とサイドギリギリまでクロッチがあったため伸びづらく、履き心地に改善の余地があったんです。よりお客様の体にフィットして、履き心地のよさと漏れにくさを両立することにチャレンジしています。



かなり繊細に設計されているんですね。起業されるまで商品開発経験はなかったとのことですが、実際に開発する側になって気づいたことはありますか?

パンツの面積が広ければ広いほど、吸収してくれる部分が増えて安心感がありそうじゃないですか。でも実際にやってみたら面積が広いほど、隙間ができて漏れやすかったんです。他にも、パンツのサイド部分に防波堤としてテープを貼ってみたこともあります。すると、サイドに水分が集まり過ぎてしまい、結局漏れました。

自分が「こうなんじゃない?」と思っていたことが、テストをしてみると違ったということはたくさんありますね。しかも自分で試せる期間が月に1週間しかないじゃないですか。だから商品開発はめちゃくちゃ大変です。


吸水型パンツの構造。Period.のクロッチ部分はベビー服や子供服などにも使われている伸縮性のある柔らかいスムースを使用し、履き心地のよさを実現している。

テストデータを集めるのが難しそうですね。すべて寺尾さんがレビューされているんですか?

機能面に関してはわたしが試着してレビューをしていますね。テスト段階で何種類かタイプを作っておき、生理がきたら1週間で毎日違うタイプをはいて一気に試します。

一方、新しい商品を作る際には、お客様からのレビューをとても参考にさせてもらっています。例えば、「においが気になる」というお声に対して、抗菌防臭の生地を入れたり。これすごく面白いなと思っていて、実はわたし、においは全然気にしてなかったんですよ。むしろ、お手入れの方法が簡単じゃないと続けられないなと思っていたので、すごく簡単な方法にしたり。

開発をしていく中で、自分が気にしていることと、お客様が気にしていることってやっぱり違うんだなと実感しています。暮らし方や環境って一人ひとり違うので、お客様からの意見がすごくありがたいですね。

「性別」や「生理と普通の日」の境目のない世界を目指して

ブランドについて説明する際、「女性のため」といった表現を意識的に言わないようにしていると伺いました。背景にはどんな想いがあるのでしょうか?

今世の中にはジェンダーという観点からすると、いわゆる「男」「女」の2種類じゃなく多様なジェンダーが存在しています。そんな状況において、男か女どちらかにしか当てはめられないというのは、時代に合っていないなと。

わたしたちは、生物学的な意味での”female”にフォーカスした商品を出していますが、”female”=”woman”ではないと思っているんですよ。必ずしも女性だから生理があるわけでもなく、先天的な理由や病気などで生理がない人だっているんです。また、男性だけど生理がある人もいます。「生理がある人=女性」と結びつけてしまうと、そうでない人たちを阻害することになってしまうじゃないですか。

たしかにそうですね。

それはやっぱり違うと思うんですよ。だからPeriod.は「生理のあるすべての人々」に使ってもらえる商品としてスタートしました。ただ、活動を続けていくうちに、尿漏れなど生理以外の使い方もできることがわかってきたんです。

だから今は「Period.のパンツを必要としているすべての人々に届ける」ことをミッションとしています。わたしたちがジェンダーなど使う人を絞ったりはしたくない。必要な人に使ってもらえたら嬉しいですね。

まさにインクルーシブな感覚そのものですね。寺尾さん自身はそういった感覚はいつごろから感じられていたんでしょうか?

うーん、なんでしょうね…。周りにLGBTQの友達が多いとかではないんですけど。これはわたしの感覚になるんですが、日本人だろうがアメリカ人だろうが、人種はバラバラでも同じ地球市民、みんな仲間じゃないですか。だから、ちょっと自分と違うからといって排除するのはすごくナンセンス。わたしは人はみんな違って当たり前じゃんと思って生活しているのに、どうして型にはめたがる人がいるんだろうと昔から不思議に思っていました。

「人」というくくりでは同じで、でも一人ひとりはみんな違いますよね。

自分とまったく同じ人なんて、絶対にいないじゃないですか。似ているから仲間で、似ていないから仲間じゃないと考えるのって、変だなと。みんな違うと認め思い合った方がいいなとずっと思っていて。

だから性別についても同じことで。誰かに限定せず、いろんな人に使ってもらえた方が、その商品すごいかっこいいじゃんって思ってるんですよ。一部の人しか使っていないものよりも、みんなに受け入れられている方がいい商品の証なんじゃないかなと。そもそも自分が使ってみて本当に素晴らしくて、あらゆる人に使ってもらいたいと思ってつくり始めたので、その想いが溢れ過ぎているのもあると思います。

このインタビューを通して寺尾さんの想いはひしひしと伝わってきます。

あと、わたしたちがやりたいことって、「普通の日」と「生理の日」の境目をなくすことなんですよ。例えば、ピルを飲むことや吸水型パンツをはくことで、嫌でしょうがなかった「生理の日」を「普通の日」に戻すことができる。だから、Period.としては毎日はいてもらうことが理想ではあるんです。毎日はくことでいつ何が起きても、失敗しないし嫌な思いもせず傷つくこともない。

「境目をなくす」ってすごく素敵ですね。

今って1ヶ月のうちおそらく1週間くらいしか、楽しくハッピーに生きられる週ってないんですよ。残りの3週間はPMS(月経前症候群)や生理だったりでだいたい何かしら不調。そんなのもったいないじゃないですか。ある意味苦痛な人生だと思うところもあって、それを逆転させてたいんです。

もちろん人生にはいろんな出来事があるけど生理だけに関してだと、1ヶ月丸々何も考えずに常に一定に過ごせる世の中になったら、もっと自分の人生を楽しめるようになっていろんなことが広がっていくと思うんです。Period.は生理という点から支えていけたら嬉しいですね。

既存の選択肢がすべてじゃない。自分の意志で選択できる未来を

&befullは心身の健康を目指すプロジェクトなのですが、実現する上で何が大切だと思いますか?

自分の健康状態って知らない人の方が多いのかなと思っています。意識はしているけど、何か具体的に行動している人は意外と少ないように感じています。生理に関しても似ていて、自分の生理の量が多いのか少ないのかを知らない人が多いかなと。人と比べることもないし、最近は増えてきましたが、そもそも生理について話す機会もあまりありませんでした。

自分のことってわかっているようで、知らないことも多いですよね。

Period.の商品は吸水量が20〜30mlと、実はそんなに多くないんですよ。もっと大きい容量のものを扱っている会社もあります。容量を増やしていっているところも多いです。

でも、Period.はあえて吸水量を増やしていません。なぜかというと、20〜30mlの吸水量で全然間に合わないほどの出血がある場合、過多月経(註2)の疑いがあるんですよ。もし吸水量が多く、「漏れてないから大丈夫」と思ってしまったら、その人は過多月経であると一生自覚することなく、もしかしたら病気が進行してしまうかもしれないじゃないですか。

註2:月経の出血量が異常に多いもの。参考:http://www.jspog.com/general/details_10.html

たしかに。

それってすごく危ないことだと思うんです。やっぱり自分の体のこととはいえ、状態を正しく判断することは難しい。だからちょっとでも違和感や異常を感じたら、それを個性と思わず病院に行ってほしくて。婦人科ってすごく行きづらいと感じがちなんですけど、それでも足を運んで確かめてほしいんです。そのためにもPeriod.の商品は吸水量をわざと多くしていません。


パッケージはポスト投函できるよう、シンプルかつコンパクトに設計。リニューアル後の商品にはサトウキビを絞ったときの残りカスでできた、バガス紙の箱を使用している。

個性と思ってしまうことはありそうですね。寺尾さん自身は違和感や異常を感じた経験はありますか?

わたし自身体験したことなのですが、一時期気分の上げ下げが激し過ぎて、心の病気だと思っていたんです。誰に頼ったらいいのかもわからないし、どうしたらいいんだろうと思っていたときに、ちょうど吸水型パンツに出会ったんです。

パンツを履くときによくよくカレンダーを見てみたら、いつも同じタイミングで気持ちの変化がきていたことに気づき。PMSの症状に見事に当てはまっていました。すぐに婦人科に行きピルを処方してもらったら、今まで生理期間中に感じていた絶望感やイライラ、悲しみがなくなったんです。

気づけたからこそ、解決に向けて行動できたんですね。

自分の生理の量と同じく、周期的な変化を知ることによって「どうしようもない」と思っていたことを、「どうにかできる」ものに改善できるんだと学びましたね。そのきっかけとして、吸水型パンツを使って自分の体を知ってもらえることにはすごく可能性を感じています。

自分の体を知った先にはどんな世界があると思いますか?

体のことを知ることで、どんな治療を受けたいか、どんな選択肢がほしいかといった意見が生まれてくると思うんです。今の世の中のルールにとりあえず従って生きるのではなく、自分たちが「もっとこうだったらいい」「こうしてほしい」と声をあげていくことで自らの手で未来を開くことができる。そのためにも自分の体のことを知っておかないと、始まっていかないのかなと。

今の社会って与えられたものの中から、仕方なく選択していることも多いと思うんです。そうじゃなくて、自分の意志で選択できるものを増やしていきたい。Period.の吸水型パンツとの出会いをきっかけに、自分の声をあげてくれる人が増えたら嬉しいですね。


INTERVIEW & TEXT BY TOMOHIRO NAKATATE

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