忙しい毎日に自分を取り戻す時間を。想いを循環させるderikaが提供する余白

with who?

株式会社グリーディー 代表取締役 / アロマブレンドデザイナー

浜出理加

17年間株式会社ピーチ・ジョンにて勤務。テレオペレーターで入社後、コスメ企画課マネージャーをはじめ、カスタマーセンター長、カタログ通販課課長、社長室、CS推進チーム副部長、マーケティング本部副部長、コミュニケーションデザイン部副部長など、社内で多種多様な部署、役割を経験する。社員の9割が女性の同社で、延べ200名以上の女性のマネジメントを経験し、女性目線での働き方、ライフステージにおける課題解決の重要性を実感。自身も東京と仙台での二拠点生活中にワークライフバランスを強く意識するようになり、2017年2月退職。同年5月趣味と過去の経験を活かし、株式会社グリーディーを設立。現在はアロマデザイン、香りを使った企業ブランディングを中心に展開。その他女性のエンパワメント推進を目的に、2021年9月一般社団法人ワンエムイノベーションを設立。女性が幸せに生きるための選択しを増やすべく活動をスタートさせる。

ママとしての自分。パートナーとしての自分。職業としての自分。趣味をしているときの自分。誰かや何かとの関係性における「分人」的な自分ではない、自分自身であるということ。当たり前のように見えて、意外とその時間は1日のうちで少ないのかもしれない。

そんな「自分」を取り戻す余白を提供してくれるのが、アロマ&ハーブブランドの『derika』だ。

創業者である浜出さん自身のこれまでの歩みや、彼女が手がけるブランドのストーリーからは、「自分を取り戻す」ことで輝く生き方を垣間見ることができる。

自分を大切にすること、そのための一歩を踏み出すこと。そこに向かってそっと背中を押してくれる、浜出さんの物語をお届けします。

もっと自分の人生に”貪欲に”なったっていい。

浜出さんは17年間勤めたピーチ・ジョンを50歳のときに退職され、グリーディーを起業されました。どんな想いやきっかけがあったのでしょうか?

東日本大震災のとき仙台にいて、被災したんです。津波の被害はなかったのですが、当時ピーチ・ジョンは仙台にあった本社機能を東京に移したタイミングだったこともあり、「自分の仕事がなくなるかもしれない」と猛烈に不安になりました。心の拠り所でもあった会社がなくなる可能性があるなんて考えたこともなかったのですが、それが現実になるかもしれない。

それからは「ピーチ・ジョンの浜出理加」でなくなったとしても、生きていける自分にならないとと思い、個人でも活動するようになりました。もともと香りが好きで、ピーチ・ジョンの化粧品や店舗の香りをつくったりもしていたので、一番最初に始めたのがアロマだったんです。石けんを手作りするワークショップや香りの商品開発を手がけるなど、徐々に仕事も増えていきました。

まずは副業という形で自分の活動を始められたんですね。いざ独立をしようと決めたのは何かきっかけがあったのでしょうか。

震災後、東京の本社から呼ばれることが多くなってきて、管理する部門が増えたり新しい部門を立ち上げたりと忙しくしていました。東京と仙台の二拠点生活をしていたのですが、パートナーは仙台にいて。仕事はおもしろくプライベートも順調でしたが、数年後を想像したときに一番大切な存在であるはずのパートナーと気持ちがすれ違ったり、「お互いに必要なくなっちゃうかも」と思ってしまう自分がいて不安になったんです。

それで、「最終的にやりたいことってなんだっけ?」と、生き方について考えるようになって。ちょうど早期定年退職制度が導入されたタイミングだったので、思い切って独立することにしました。50歳でした。ちょうど節目としてもいいかなと。


ピーチジョン時代の浜出さん

東京ではなく仙台で起業されたのは、パートナーさんの影響が大きいのでしょうか?

自分が一番ホッとできる大切な居場所はやっぱり仙台だったんですよ。東京転勤という話もありましたが、大切な人や居場所を捨ててまで仕事をしたいとは思えず。

でも仕事を全部諦めるのも嫌だったんです。だから仕事も自分の居場所もどちらも捨てない生き方を粘って考えた結果、二拠点生活を経て仙台で起業することにしました。わたしって結構、欲張りなんですよね(笑)。

社名のグリーディー(greedy)は英語で欲張りという意味ですよね。

前職は社員の9割が女性でお客さんも女性ばかりだったので、結婚や出産、パートナーの転勤などたくさんのライフイベントをみてきました。わたし含め、キャリアを考えると仕事の幅を広げるには、東京に行くしか道がないと感じている人は多くて。

でも東京に行って頑張ろうとまでは思えず、キャリアを諦めていく人が多いなと感じていました。最終的には自分で決めたことだし、自分の責任なんだけど、地方にいても自分のキャリアに貪欲になれる環境をつくれたらなと。

わたし自身のキャリアを振り返ると、目の前の仕事を諦めないで続けたからこそ自分が本当にやりたかったことを実現できたように思うんです。趣味で好きだったアロマと、本業でやっていたマーケティングやブランディング。両方やり続けて独立したときに、ようやく一つに繋がったんです。どちらかだけだと、きっと成り立ってなくて。だからもっと多くの人が何かを諦めずに、「欲張りさん」になってほしいと願い社名にしています。

自分が元気じゃないと、優しさは生まれない。自分を取り戻す余白を提供するderika

グリーディーが手がけるderikaはどんなブランドなのでしょうか?

これはあんまり人に言うと恥ずかしいんですけど、derikaというブランド名は自分の名前から取ってるんですね。「香りをデリバリーする」と説明することもありますが、実はわたしの名前です(笑)。なのでロゴは浜出家の家紋をモチーフにしていたりします。

どれだけ自分が好きなんだと言われそうですが、もうそれでいいかなと開き直って決めました。香りに関してはそのときの気分で香りも着替えてほしいなあという個人的な想いからブランドを始めているので、間違ってもないかなと。

「香りを着替える」っていいですね。

その時々で心地いいと思った香りを身に纏ってもらいたいですね。特に女性はホルモンバランスの変化によって、同じ香りでも嫌なものになったりするんですよね。自分が「いいにおい」と感じないと、効かないということもあると思っていて。

アロマを効果効能で選ぶのも大切だけど、それ以上に単純にいいにおいだとか、使って気持ちいいって思うかどうかが一番大切。その感覚って本能的に正しいと思っていて。だから、気軽に香りを着替えることは自分自身を大切にすることなんですよ。

ブランドストーリーには「余白を生み出すことで、わたしを取り戻す」とあります。香りを変えることで、どんな体験が生まれるのでしょうか?

最近だとコロナ禍でいろんなことが変化しているし、特にほしくもない情報が勝手に入ってくる状況じゃないですか。常に心が満タンな状態で、これ以上詰め込まれると溢れ出ていってしまう。

一方で、ちょっと自分から離れたり、自分を俯瞰してみるとかって、それこそ余白がないと絶対できないことだと思うんです。だからderikaを使うお客様にはあえて普段やらないことをやってみたり、余白というものを意識してほしいと思いブランドストーリーに「余白」という言葉を入れています。

アロマって直接的に何かに役立つわけでもないし、一見無駄なものかもしれません。だけどやっぱり無駄なものって、鈍った感覚を取り戻せると信じているんですよ。人生を豊かにしてくれる。それは天然の香りが持つ力だからこそできることだと思っていて、derikaでは天然のエッセンシャルオイルを使っています。

最近の柔軟剤とかは、「ずっと香りが持続します」とアピールされているじゃないですか。それってある意味、「ずっと同じ香りを、嗅がせ続けられている状態」なんですよ。嗅覚は五感の中で唯一、感情や本能に関する「大脳辺縁系」、つまり脳に直接伝達されるものなので、ずっと同じにおいを嗅がせられると脳が疲れてしまう。

よくお客様から、「derikaの香りはどれくらい続くんですか」と聞かれるんですが、「そんなに続かないです」とはっきり答えています。でも、その方がいいんですよ。天然の香りが持つ力って、嗅いだ瞬間「はあっ」って気が抜けたりリセットできたりすることなので、その効果を使って自分に戻れる余白を生み出してもらえたら嬉しいですね。

余白というと、derikaでは「感覚をリセットする1秒間」「わたしに戻る7分」など時間を使った表現も印象的です。

ちょうど去年derikaをリブランディングして、わたしたちが提供している価値ってなんだろうと見直しました。それが、「余白を生み出すきっかけ」。derikaはアロマを売っていますが、お届けしているのは余白だったと気づいたんです。例えばアロマミストであれば、シュッとかけた瞬間の香りで気持ちが切り替わる。時間にしてわずか1秒です。

他にも「わたしに戻る7分間」というハーブティーを企画担当してくれたスタッフは2児のママなんですけど、すごいバイタリティがあって家でもせわしなく動いていて。そんな毎日の中に、ちょっとでもいいから自分の時間がほしいよね、という雑談から生まれた商品なんです。

実際に彼女がお湯を沸かしてお茶を入れて、フーフーしながら飲む時間を測ってみたら、実はたったの7分間だった。でもその時間がすごくよかったそうなんです。そこから「奥さん」や「ママ」でもない「自分だけ」に使える時間として、「自分に戻る7分間」というコンセプトが生まれました。

誰かとの関係性における自分ではなく、自分自身にというのがすごく素敵ですね。

まず自分が元気じゃないと、周りの人を助けられないんですよね。それは東日本大震災のときにもすごく実感しました。まず自分がちゃんと倒れないでいることが大事。自分に余白がないと、人に優しくできないですよ。

でもこういうことって意識してないと、すぐに忘れてしまう。わたしも家で仕事をしていて忙しいときには余裕がなくなって、パートナーと喧嘩になったりするので。だから無意識のうちに自分を意識できることが、わたしたちの商品の価値でもあるのかなと思っています。

想いの循環こそが、サステナブルライフの根幹

derikaはサステナブルライフスタイルを提唱されています。どのようなスタイルなのでしょうか?

サステナブルって、無理しないで続けられることなのかなと思ってるんですよね。誰かが無理して続けられることではなくて。お互いに興味関心を持って、みんなでシェアし続けていられる世界がサステナブルな世界なんじゃないかと。

derikaの商品の1つに、『aroma journey』という宮城県石巻市にある雄勝町の無農薬ハーブを使ったマスク&ルームスプレーがあります。雄勝町は東日本大震災で町のものがごっそり流されてしまった場所。ハーブ自体は日本中いろんなところで取れるんですが、どうして雄勝町のハーブを扱っているかと言うと、そこに住む人たちの姿に心打たれたからなんですよね。発する言葉や生きる姿が美しいんですよ。行く度に圧倒されるものを感じます。

ハーブを生産している『雄勝ローズファクトリーガーデン』は、代表の徳水利枝さんが生まれ育った家とお母様を亡くされた場所でもあります。津波で全部流されて茶色くなってしまった世界に、せめて花を植えたいと思ったのが始まり。わたしたちはそんな彼女の想いに共感して、一緒に活動しています。

嬉しいことにお客様の中には、derikaの商品と出会ったことがきっかけで雄勝町を訪れた方もいました。そんな想いの循環が生まれていくことも、サステナブルなことなのかなと感じています。


雄勝ローズファクトリーガーデンにあるシンボルツリー

誰かが無理をせず、想いが循環していくことがサステナブルというのはとても素敵な定義だと感じました。ガーデンに関わっている方々はどんな想いでハーブをつくられているのでしょうか?

ガーデンでハーブを摘んでくれているのって、おばあちゃまたちばかりなんですよ。地元では「森の妖精さん」と呼ばれる元気なおばあちゃまたちが、「ガーデンにくると10歳以上若返る」なんてことを言いながら、丁寧にハーブ摘みから乾燥作業までぜんぶ手作業でやってくれています。

たぶん彼女たちは自分たちがつくったハーブが、アロマになっていることについては、あまり認識をしていないかもしれません。出来上がるものに対して想いがあるというよりは、彼女たちにとって作業をすること自体が、元気の源になっているみたいなんです。わたしたちも彼女たちの姿勢からすごく元気をもらっていて、それもいい想いの循環なのかなと感じています。

答えは誰も持っていない。だかこそ、自分が決めて自分の人生を。

COMMEARTHでは「自分や地球のための一歩」を応援しています。ただ、何か一歩を踏み出すときに、変わることを不安に思ったり恐れてしまうこともあると思います。浜出さんはこれまでの経験を踏まえて、何があると一歩踏み出せると思いますか?

答えがないものって、やっぱり怖いんですよね。コロナだって先が見えないから怖い感じる部分もあると思うんです。そんな中で一歩踏み出したりチャレンジすることは怖いことだけど、でも答えは誰も持っていない。自分が決めることだと思うんですよね。

わたし自身振り返っても誰かに決断を委ねる人生を歩んでいたときって、全然幸せを実感できなくて。一旦仮でもいいから自分の心の中で、「こうじゃないかな」と決めるだけでも何か変わるはずなんですよね。突然大きなことはできないので、ほんの少しだけ何か決めて変えることをトライしてもらえたらなと思います。

自分で決めることこそが大事だと。

ピーチ・ジョンに入社したときは、コールセンターのオペレーターの1人でしかなかったんですよね。たまたま社内企画の募集をみて、当時パソコンすら全然使えなかったのにやってみたいという気持ちだけで手を挙げて。

今思うと現実逃避の気持ちもあったかもしれないんですけど、全然悪いことじゃなかったなと。「逃避」って今を変えることだと思うので、恐れなくていいんです。止まらないことが一番大切だとも思うので、すごくゆっくりでもいいから辞めないで続けること。時間が経つと周りの景色も変わってくるし、いつの間にか違う場所につくことだってある。だから、日々の生活の中で、ちょっとしたことを変えるだけで全然いいと思うんです。

derikaのハーブティーは、ハーブティー大好きという人向けの見せ方をしていないんです。どちらかというと、あまりハーブの知識がない人が手に取りたくなるきっかけになれたらと思ってパッケージをデザインしています。そこからハーブについて知って興味を持ってもらったりと、何かちょっと変えることを、後押しできたら嬉しいですね。




INTERVIEW & TEXT by TOMOHIRO NAKATATE

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