4/30まで送料無料
2021.04.15

人に優しいものは、自然にも優しい。毎日の家事をプラスに変えるホームケアブランドKomonsのこだわり

with who?

株式会社Unsungs&Web代表

有井誠

日本から世界に向けた「Crafted in Japan」のブランドを創ることをミッションに活動中。伝統工芸や職人の技術をよりどころとするブランドではなく、日本のものづくりの技術を活かしつつ、新たなライフスタイルを提案するブランドづくりを目指している。自社ブランドとして、ホームケアブランド「Komons」とレア・ドライフルーツのブランド「FRUITEST」、果物の無人販売所「F STAND」を設立。

掃除、洗濯、食器洗いやトイレ掃除。
暮らしに欠かせない、多くの人が過ごす家事の時間。

多くの人が毎日関わることだからこそ、その時間が少しでも豊かになれば、人類の幸福度の総量は劇的に上がるのではないかーーそんな期待を抱かせてくれるブランド。

それが自然の素材をなるべく使い、気持ちも”あげて”くれるホームケアブランド『Komons(コモンズ)』だ。

Komonsの一番のユーザーは創業者の有井さん自身であり、奥さんであり、3人のお子さんたちだという。

大切な人たちのためにこだわり抜いたからこそ、開発までに費やした期間は20ヶ月。「商売に振り切って作っていたら、もっと楽だった」と笑いながら振り返る有井さんに、Komonsにかける想いを伺いました。

日常の中で感じた「怒り」から生まれた、手荒れしない食器用洗剤

Komonsは有井さんが立ち上げられたホームケアブランドです。どういった想いや背景があったのでしょうか?

少しさかのぼってお話しすると、大学院のときにスイスに留学していたんです。日本とかなり離れた国の授業でも、日本の技術の話はたくさん取り上げられていたんですけど、それをどうビジネスに生かしているかといった話になると、まったく日本の話は出てきませんでした。それがなぜだか悔しくて悔しくて。その悔しさが今でも原動力になっていて、日本のいいものを使って海外に展開していきたい想いがまず根幹にあります。

帰国後は、日本企業の海外展開に強いコンサルティング会社で働いたあと、兄が立ち上げたレーザーカッターの事業を手伝っていました。そんなとき、ちょうど子どもが生まれたんです。その結果家事をする時間が増え、身の回りのものに目が向くようになりました。

特に気になったのが、食器用洗剤。離乳食って1日5回とか作るんですけど、奥さんが洗剤をつけてお湯で洗っていると、手がめちゃくちゃ荒れて赤切れになるんですね。ごく普通の洗剤を使っていたんですけど、高くてもいいからもっと手が荒れないものがほしいなって。それで国内外の洗剤数十種類を試してみたのですが、満足のいくものには出会えませんでした。

手軽に手に入れられる洗剤って、汚れがよく落ちる強力で機能性が高いものか、手には優しいけど汚れが落ちにくい洗剤。極端に言うと、この2つしか選択肢がない。それってすごく前時代的だなと。だったら、エコでナチュラルで人に優しい素材で、香りやデザインなど使っていてテンションが上がるようなものを作れないかなと考えたんです。それがKomonsを作り始めたきっかけですね。


Komonsの由来は着物の柄である「江戸小紋」。江戸時代、幕府から贅沢をせず無地の着物を切るようにと言われた人々が、「何気ない毎日を、ちょっと楽しく」するために、遠目には無地に見えるけど近くで見ると柄模様が楽しめるようにとデザインされたもの。Komonsも同じ想いを引き継いでいる。

ご家族の体験がきっかけだったんですね。開発には奥さんも関わられたとか。

奥さんは細かく何かを言うことはなく、どれがいいかズバッと言ってくるタイプでした。僕が「これでどうだ」と思ったものを、「においがあんまりかも」と言われて「僕のこの1ヶ月をどうしてくれるんだ」と思ったこともありました(笑)。

香りに関しては子どもの意見もすごくよくて。奥さんと同じく直感的に判断してくれました。最終的に売れなかったら自分たちで使い切ろうと覚悟していたので、そうなったときに奥さんと子どもが嫌がるものだったら地獄じゃないですか。開発のきっかけも家族ですし、喜んで使ってもらえることが何より大切で。だから、家族がズバッと「これいいね!」となったときは本当に嬉しかったですし、自信を持って進められました。

その後もさまざまな苦労があったそうですが、乗り越えられたのは何が支えになっていたのでしょうか?

完成するまでに最終的には20ヶ月ほどかかりました。ロットや要件へのこだわりの関係で40社以上の生産工場に断られ、何度も心が折れかけました。ストレスからか、身体中に蕁麻疹も出ました。それでも踏みとどまれたのは「怒り」だと思うんです。

どうして洗剤には選択肢がほとんどないのか。なぜ奥さんの手が荒れてしまうものしかないのか。洗剤における「これは絶対おかしいよね」が、5年後なのか10年後なのか、必ず変わっていくはずだとすれば、その変化を自分で起こしたい。

ただ、大手メーカーに一矢報いることができるとは思っていません。AとBの選択肢しかない世の中に、Cという第三の旗を立てること自体はできる。その旗が立つことで世界が広がるのではないか。そこに意義を感じてやっています。

わかりやすさより、複雑みを。”ハマる”香りのつくり方

Komonsは商品紹介ページに香りのチャートを載せたりと、香りにこだわられているように感じました。その源泉はどこにあるのでしょうか?

僕は生まれが山梨県の南アルプス市で、小さい頃から地元の近隣の人から果物のお裾分けをたくさんいただいていました。どれも完熟していて、本当にいい香りをしているんですね。それが当たり前だと思って育ってきたんですけど、大学で東京にきてからびっくりして。東京のスーパーで売っている果物、全然香りがしなかったんですよ。

果物って完熟して、食べてもいいよというタイミングで鳥や虫を呼び寄せるために香りを出します。だけど、東京にきている果物って完熟前に収穫して届けられたものだからか、香りを全然感じなかったんです。

そんな体験をしているので、香りについては気になっちゃうんですよね。Komonsは精油(エッセンシャルオイル)だけで香りをつくっていますが、開発難易度も高く原価も一般的な商品の10倍以上。一切手を抜かないのは、そういうところにルーツがあるのかもしれません。


ハンドソープ “I can hear music” の香りの特徴。右側にあるチャートは独自に作成している。

精油だけにこだわるのは何か理由があるのでしょうか?

一般的に人工香料って、3〜5つくらいの成分の組み合わせでできています。一方で精油はオレンジ1つとっても、100種類くらいの成分が入っているんですよ。複雑みが全然違う。そんな精油を使って10〜20種類とブレンドしたら、やっぱり人工香料には出せない世界観があるよなと感じています。

香りをつくるにあたって、すごく大事にしているのがこの複雑性。よくゆずの精油を使った化粧水とかが売られていますけど、パッと嗅いで「ゆずだね」とわかりやすい香りと、1ヶ月使ってなくなるくらいのタイミングでハマる香りはやっぱり全然別物です。

日本には複雑みのある、いい香りを引き出せる素材がたくさんあるんですよ。特に山椒やゆずはすごい。でも、単純にゆずだけだと、深みが弱いんです。だから山椒やゆずといった素材をうまく重ね合わせて、複雑みのある深さがある香りをつくることはKomonsとしても一番大きなテーマになっています。パッと嗅いでいい香りだと思ってもらうだけなら、ゆずを入れるだけでいいんですよ。

複雑だからこそ、1ヶ月使い続けてようやく香りの深みがわかってくるのでしょうか。

初めて嗅いだときに、「ん?」と引っかかりがある方が逆にハマると思うんですよね。そういう複雑みや深さがないと、結局飽きてしまう。だからこそ、しっかりブレンドして日本を代表する、世界に通じるものにしたい。

ちなみにKomonsはすべての商品に木の香りを使っています。日本にはたくさんの種類の木があるので、日本らしさを出せるかなと思って。

自分の目でみて語れる素材だからこそ、自信を持ってお届けできる

山椒やゆずなど、素材開拓には基本的に有井さんご自身が産地に行かれているそうですね。

現地に行かなくても仕入れようと思えば、仕入れられるところも多いです。でも、やっぱりちゃんと生産者の方の顔を見て、どういう人が作っているのかを知るからこそ、ぼくも頑張れるところがあるんですよね。例えばゆずは真冬のめちゃくちゃ寒いときに収穫されています。そういう背景を知っているかどうかでやっぱり思い入れは変わりますし、いい香りのものをつくっているんだと自信にもなります。

ちなみに、和歌山県の山椒は特殊ですね。これは山椒屋さんにお話を伺ったときに、山椒をひいたときに出る籾殻や挽き殻があるのを見て、「これをいただいてもいいですか?」ともらってきたんです。いざオイルを取ってみたら、香りが衝撃で。花と木と柑橘が何種類もブレンドされたかのような、複雑な香り。そういった新しい発見は、産地を直接開拓しないとなかなか出会えないですね。

素材でいうと、Komonsには茶の実オイルが欠かせないとのこと。これはどんなものなのでしょうか?

茶の実オイルは保湿機能が高く、保湿剤として手に直接触れるハンドソープと食器用洗剤に入れています。茶の実って要はお茶の花が咲いて実になったものなんですけど、そもそも普通お茶は花が咲かないように育てるんですよ。葉っぱに栄養をあげるために、コントロールしていて。だから茶の実を見かけることは少ないんです。

そんな珍しい茶の実ですが、Komonsで使っているのは「岐阜のマチュピチュ」と呼ばれる揖斐川町(いびがわちょう)にある「天空の茶畑」のもの。30年近く放棄された雑木林みたいになっている場所で、誰も管理をしていないので、花が咲いて実がなってボトボトとそこら中に落ちているような状態だったんです。

そこで茶の実からオイルを取っている人たちがいて、おもしろいなと思い調べてみたら効能もしっかりあって。そんな素晴らしい素材を、茶畑のおじさんの家に3泊させてもらい、ジビエと鮎をご馳走になりながら見つけました(笑)。


全国の耕作放棄の茶畑から、茶の実オイルを生み出す活動をしている緑門の方々。揖斐川町にて。

まさに自然そのものの恵みをいただいてるんですね。

自然のものって例えばヒバはヒバでも日本には何種類もあり、地域によって香りも違うんです。また、毎年果物の味が変わるように、時期によっても香りは変わります。これはいい面でもあれば、大変な面もあって。

香りの難しいところはロットごとに香りが変わってしまうんです。1種類でも時期や地域によって変わるのに、それを何十種類もブレンドしていると同じ配合で作っていても一定の香りにはならなくて。だから僕たちは、ロットごとに微妙にブレンドを変えています。

わかりやすく作れるなら、どんなに楽だったか

Komonsは自然由来のものを多く使っています。オーガニックといった表記もできると思いますが、あえてしていないのでしょうか?

自分で作っておきながらよく思うのが、すごくわかりづらく作ってしまったなと。自分の大切な家族に使ってもらうとなると、やっぱりわかりづらくなると思うんです。

よくある「植物由来100%」といったことをやった方が、絶対わかりやすいじゃないですか。ただ、植物由来100%にすることが本当に体にいいことなのかを調べていくと、そうは思えなかったんです。

例えば、抗菌効果を持たせるために、ヒバの精油だけで作ったとする。でも、精油って入れすぎると、体への刺激が出ることはあるんですよ。それは本当に体にいいことなのだろうか。同じように、「〇〇オーガニックオイル」とかも入れた方がわかりやすいんだと思いますが、成分を調べていくと、本当に大丈夫だろうかと感じるものは多いんですよね。

わかりやすく作ろうとすればするほど、目をつぶらないといけないことも結構ある。だから成分1つ1つにこだわっていくと、すごくわかりづらくなるんです。一言でこれが特徴です、と非常に言いづらい。


食器用洗剤”Don't Look Back in Anger”。Komonsの商品名は基本的に、洋楽のタイトルから選ばれている。ちなみに”Don't Look Back in Anger”という名前には、ちょっと面倒な食事のあとの食器洗いの時間を、夫婦のどちらがやるかで押し付けあうことなく「プラスの時間」に変えられたらという想いが込められている。

必ずしも植物由来だけで作ることが、人に優しいわけではないんですね。地球環境に対してはどうでしょうか?

食器用洗剤でいうと、基剤となる界面活性剤をヤシ由来の生分解性の高いものを使っています。ただ、基剤に関してはどのメーカーさんも大抵環境に優しいものを使ってるんですよね。時代の流れもあって、あからさまに危ないものを使っているところはほとんどありません。

ただ、Komonsを作りながら気づいたのですが、副原料に人や環境に対して本当に優しいのだろうかと思うものを使っている商品はありました。除菌効果を持たせるための成分や、油を浮かせるためのキレート剤だったり。Komonsでは精油などの自然の力を使い、副原料で危ういと判断したものは使用しないようにしています。

わかりやすいところだと、食器用洗剤に入れているゆずは油を浮かせる力が強く、汚れをよく落としてくれます。基剤や副原料で変なものを入れず、植物の力に頼って環境負荷を低くしているところがポイントですね。

人に優しいものを、というのが開発のきっかけではあるんですけど、人も自然も結局は同じで。人に優しければ、自然にも優しいと思います。

多くの人が毎日過ごす家事の時間を気持ちよく

Komonsを使った方からの反響はありましたか?

ありがたいことに、お客様からも嬉しいメッセージをいただくことが多くあります。「お皿を洗うたびにテンションが上がっています」とか、「パッケージにひかれて買いました。正直1回使ったら別のものを入れようと思っていたけど、だんだん香りにハマっていき、ずっと使い続けたくなりました」とか、まるでサクラかのように言ってもらえて。

頑張れば伝わるんだなあと思いましたし、香りも複雑みと深みのあるつくり方をしてよかったなと感じました。何より、Komonsを使い始めて、奥さんの手が荒れがなくなったんですよ。あれは本当に嬉しかったですね。

それは感無量ですね!Komonsを使うことで、日々の家事の時間が豊かになりそうです。

コロナ禍で感じている人も多いかもしれませんが、毎日のルーティーンである家事ってマンネリ化してくるし、疲れていたりすると家事が原因でパートナーとの関係もだんだんギスギスしてくることがあるんですよ。

家事の時間って、特に子どもがいる家庭だと毎日数時間は費やしているそうです。そんな多くの人が毎日過ごす時間をちょっとでも気持ちよくできたら、幸せに暮らせる人たちが増えるんじゃないかな。

数百円で手に入るものを、2000円近いものにするって、どうしても高く見えちゃうと思うんです。でも1ヶ月、毎日繰り返す時間が少しでも豊かになるなら、いいかなって思ってもらえると嬉しいですね。


INTERVIEW & TEXT BY TOMOHIRO NAKATATE
PHOTOGRAPHS BY MEGUMI SUKO

Share