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2021.10.15

掃除をもっとラクに、もっと楽しく。人にも地球にも優しいナチュラルクリーニング術【掃除編】

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ナチュラルクリーニング講師

本橋ひろえ

北里大学衛生学部化学科(現・理学部化学科)卒業。化学系の企業に就職し、化学事業部にて水処理事業、化学薬品販売、合成洗剤製造などを担当。結婚を機に退職し、専業主婦として家事を担当。子どもが産まれ、自身と同じアトピー体質であったことから、改めて主婦として洗剤に興味を持つ。掃除、洗濯、洗剤を主婦目線で、かつ科学的に解説するナチュラルクリーニング講座をはじめ、10年以上がたち、東京を中心に全国に広がっている。現在は、オンライン講座にも力をいれている。著書に『ナチュラルおせんたく大全』『ナチュラルおそうじ大全』『ナチュラル洗剤そうじ術』など。

日常的に多くの人がしている掃除や洗濯。そんな一人ひとりの身近な行動が、積もりに積もって地球規模の課題に影響を与えていると言われています。例えば環境省の『生活排水読本』によると、水を汚す大きな原因の1つは生活排水であり、そのうち台所、風呂、洗濯などの日常生活からの排水が約70%を占めているとあります。

自分にできることから何かを変えたいと思ったとき、掃除や洗濯はその一歩目になりやすいかも知れない——そんな想いを抱き、合成洗剤を一切使わない「ナチュラルクリーニング」を推進しているナチュラルクリーニング講師の本橋ひろえさんにお話を伺いました。

「ナチュラルクリーニングは一般的な掃除とは汚れを落とすことに対する考え方が違うんです」と語る本橋さん。そもそも私たちは「汚れ」について、扱っている洗剤について、どれくらい知っているのでしょうか。ひょっとしたらあなたの「掃除」に対する向き合い方が180度変わるかも知れない。そんなナチュラルクリーニングの世界をご紹介します。

いざ、ナチュラルクリーニングの世界へ

「ナチュラルおそうじ」と一般的な「お掃除」との違いについて教えてください。

おそらく一般的な掃除で使う洗剤はキッチンだったら台所用、お風呂だったらお風呂用と洗うものや使う場所に合わせて購入されていると思います。ナチュラルクリーニングではまずその考え方をやめて、汚れの種類に応じて洗剤を選ぶんです。

家庭内の汚れは、分類すると5種類だけ。まずそもそも洗剤がなくても落ちる汚れ。ほこりとか床に落ちている髪の毛とかですね。このタイプは掃除機できれいになるので、洗剤はいりません。次に、ここから洗剤が必要になるのですが、2つ目と3つ目が酸性とアルカリ性の汚れ。それぞれ中和させるようにアルカリ性と酸性の洗剤を使います。

4つ目の汚れはカビやウィルスなどの雑菌類。これは除菌効果の高い洗剤を使わないと、ただ拭いただけでは汚れが残るかもしれないタイプです。5つ目はカビが繁殖した後に残る黒い跡や食べこぼしの染みなど。これは色素を落とすいわゆる漂白剤が必要になります。

まとめると1つ目は洗剤がいらないので、最低4種類の洗剤——アルカリ性の洗剤、酸性の洗剤、除菌ができる洗剤、漂白剤——があれば家中の掃除と洗濯ができます。

それぞれどんな洗剤なんですか?

私が選んでいる「ナチュラル洗剤」は基本的に原材料が食べられるものや肌への心配がいらないものです。ペットを飼っていたり、小さいお子さんがいたりする家庭でも、多少洗剤が服や部屋に残ったり口に入れたりしても大丈夫。化学合成したものを除き、もともと地球上にあるものでできています。だから使用後流しても、環境に与える影響も小さい。

その上でまずアルカリ性の洗剤は重曹になります。他にもセスキや炭酸塩も該当しますが、これらは食べられないので、使い方に注意する必要があります。だから私は重曹しか使っていません。酸性の洗剤はクエン酸。除菌効果の高い洗剤は過炭酸ナトリウムという粉末の酸素系漂白剤と呼ばれるものと、消毒用のエタノールの2種類です。漂白できるものは、先ほどと同じく過炭酸ナトリウムを使います。これは除菌と漂白の両方ができる優れものなんですよ。

重曹、クエン酸、過炭酸ナトリウム、エタノール。この4種類があれば最低限の掃除と洗濯はできますが、もう1つ、泡がたつタイプの洗剤の方が洗いやすい場合もります。それが界面活性剤、つまり石けんです。合成の界面活性剤は使いません。ナチュラルクリーニングでは5種類だけを使います。

ナチュラルクリーニング講師の本橋ひろえさん。愛猫とともに。

汚れに応じて洗剤を選ぶことが大事なんですね。

そうですね。例えば、晩御飯にハンバーグをつくったとします。ハンバーグを焼いたフライパンとお皿は台所用洗剤で洗う。でもハンバーグをこぼして洋服に染みがつくと、今度は洗濯用の洗剤を使いますよね。さらにハンバーグを床に落としてしまうと、床の掃除のために住居用洗剤を使う。

同じハンバーグによる汚れなのに、洗剤を使い分けることが多いんじゃないかと思います。でも全部同じ1つの洗剤で落ちるんです。ハンバーグの場合は酸性の汚れになるので、アルカリ性洗剤の重曹か、油汚れがよく落ちる界面活性剤の石けんのいずれかを使えば大丈夫です。ただ、洋服に染みがついてしまい、洗っても取れない場合は漂白剤として過炭酸ナトリウムが必要になります。

なるほど。シンプルでわかりやすいですね。

これまで20年以上ナチュラルクリーニングを続けてきて感じている一番のメリットは、掃除の工程が減って手間がかからなくなることなんですよね。例えば窓の掃除をするときって、まず窓用のスプレーを買って、窓ガラスにスプレーをかけ雑巾で拭き取ります。その後、洗剤が残らないように水拭きをする。ナチュラルクリーニングの場合、まず「窓専用」という概念がなくなるので、わざわざ専用の洗剤を買う必要がありません。さらに、肌に触れても心配いらないので、最後の水拭きも不要です。私は決して掃除や洗濯が好きではありません。それでも続けられているのは、掃除が楽になっているからだと思います。

後に残るものの心配をしなくていいのは、掃除が嫌いな人にとっては大きなメリットですよね。特に小さいお子さんがいらっしゃると、洗剤に触れたり口に入れたりしないかすごく心配だと思うんです。私も子どもが生まれてから、お風呂のすすぎはどこまですればいいんだろうと悩んだことがありました。入浴剤は重曹でできているものもあるので、それで掃除をすれば多少すすぎ残しがあっても大丈夫だと思えて。それで一気に掃除に対する心理的ハードルが下がったんですよね。

ナチュラル洗剤は人や地球に「優しい」のか

ナチュラル洗剤が口に入れたり肌についたりしても心配いらないのはどうしてなんですか?

まず重曹はほとんどのものが、地層の中から掘り出しているものです。ただ海底にもたくさん重曹の層があるので、海水にも重曹成分は溶けています。身近なところだと、クッキーやケーキを膨らませるためのベーキングパウダーの主成分が重曹です。だからこうしたお菓子を日常的に食べている場合、結構な量の重曹を食べていることになります。

他にも、お風呂に溶かす粉末タイプの入浴剤。この主成分も重曹です。「重曹泉」という温泉がありますが、入って「ぬるっ」とするような温泉はほぼ重曹が溶けています。これはアルカリ性の特徴で、触ると肌の表面がぬるぬるするんですよね。だから重曹は肌についても食べてしまっても、心配いりません。掃除や洗濯後に排水しても、もともと川や海に溶けている成分なので、環境負荷も低い。ナチュラル洗剤の中で一番安心して使えるのが重曹だと思います。

酸性洗剤のクエン酸。これはレモンや梅干しに含まれる「酸っぱい味」の正体がクエン酸です。酸味料として使われることが多いですね。私たちは日常的に食べているので、口に入れても心配ありません。

消毒用のエタノールはお米などの穀物を発酵させてできるもので、お酒と同じつくり方です。ただ消毒や除菌ができるものに関しては、100%安全なものはないと思っています。消毒すれば、肌に必要な常在菌もなくなってしまうし、いくらお酒が飲めるから大丈夫といっても小さいお子さんの口に入れるわけにはいきません。重曹やクエン酸ほど安心して使えるものではないですね。

本橋さんが実際に使っているナチュラル洗剤


石けんはそれ自体は食べられませんが、メインの原材料は油です。やし油やパーム油、オリーブオイルなどに、カセイソーダというアルカリ性の薬剤を混ぜてできたものが石けん。原材料は油とアルカリの2つだけです。

最後に過炭酸ナトリウム。これだけは完全に化学的につくられています。強アルカリ性の炭酸塩と過酸化水素を混ぜてできます。過酸化水素は消毒薬などでも見かけるオキシドールの主成分でもあります。そのため消毒や除菌効果が高く、扱いには注意が必要です。これは食べたり肌についたりして大丈夫なものではありません。また、過炭酸ナトリウムは汚れと反応すると水とアルカリ成分水とアルカリ成分にに分解されます。使用後排水口から流れていくものが、ずっと除菌効果があるタイプでもないです。

なるほど。それぞれ成り立ちを知ると、自分で使いたいか判断しやすそうですね。

どうしても安心して掃除をしたい場合は、重曹・クエン酸・消毒用エタノールの3つを中心に使うと、拭き取りやすすぎの心配をしなくて済むと思います。石けんは油からできていますが、すすぎ残すとといずれ油汚れになってしまうので、しっかりすすぎをしないと雑菌が繁殖することもあるので。

またこれは持論ですが、私が使うのをためらう環境負荷が高い洗剤は、ごく少量で効果があるものです。よくスプーン1杯分だけで汚れが落ちるとか、排水口から流れる洗剤の量が少ないから環境負荷が低いと説明されているものがありますよね。少ない量で効果があるということは、川や海など大量の水で薄めたとしても洗剤としての力が弱まらない可能性がある。あくまで1つの目安ですが、少量で効果があるものは実態がどうなっているのかがわかりづらいので、避けた方がいいと思っています。

おそうじの第一歩は汚れの種類を知ることから

汚れに適した洗剤を使うためには、例えば先ほどのハンバーグの例だと酸性の汚れであると知っていないと選べないですよね。

そうなんです。掃除で一番大事だけど知られていないことは、汚れの性質だと思います。重曹がアルカリ性であるなど洗剤については調べればすぐわかります。でも家の中にどんな汚れがあって、何を掃除しなくてはいけないのか、汚れが酸性なのかアルカリ性なのかは、人生においてほとんど誰も教えてくれないですよね。

汚れの種類はどうやって調べたらいいのでしょうか?

インターネットで調べれば出てくるかもしれませんが、まだまだ誤った情報もあるのと詳しく書いてあるものはなかなかありませんね…。『ナチュラルおそうじ大全』を多くの方に手に取っていただけたのは、汚れの種類について書いたからだとも思っています。

ただ、そこまで難しいことでもないんです。そもそも家の汚れの80〜90%くらいは酸性です。だから重曹があれば、ほとんどの汚れは落とせます。

そうなんですね。

圧倒的に多い酸性の汚れ。これは油や食品による汚れ、人の体から出る汚れが該当します。油汚れはほとんどが台所由来。揚げ物や炒め物、お肉を焼いたときなどに出る汚れですね。食品由来は生ゴミや排水口のヌルヌルする汚れなど。人の体の汚れは皮膚の表面から出る皮脂や汗、尿の汚れなどです。ここまでで家の中で洗剤が必要な汚れはほとんどカバーされます。

続いて残り少ないアルカリ性の汚れ。これは水が蒸発した後に残る水あかなどです。例えば、お風呂の鏡によくついている白いうろこ状の水あか。その正体は、水道水の中に含まれるカルシウムやマグネシウムが残って固まったものです。残念ながらお風呂用洗剤でこすっても、ほとんど落ちません。なぜならお風呂用洗剤は人の体から出る汚れを落とすことを目的につくられているので、だいたい中性からアルカリ性よりのものばかり。お風呂のバスタブや床の掃除には向いていますが、鏡の汚れには不向きです。

よく洗面器の内側についている、石けんかすという洗剤と水が混ざってできる汚れ、加湿器や食洗機の中に残る白くガリガリした汚れ、たばこの匂いやトイレの嫌な匂いのもととなるアンモニア臭。これらもすべてアルカリ性です。

ナチュラルおそうじ大全(主婦の友社)


あとはカビやウィルスなどの雑菌類。これは早めに掃除をして予防したい汚れですね。ウィルスはたいてい数日ですべて死滅するので、衣服についても日が経てば心配いりません。ただカビや食中毒の原因となる菌類は勝手に増殖していきます。どんどん増えていって他の場所にも広がっていく、ちょっと特殊なタイプの汚れなので長く放置しておけない。これに対しては除菌効果の高いエタノールなどを使い、カビの発生原因を考えてなるべく早く取り除いてあげる必要があります。

最後に色素の汚れ。カビだったら黒くなるまで放置しなければ、そもそも発生しない汚れです。

このように掃除をするときには、汚れの種類がわかるようになれば、自動的に使うべき洗剤が選べるようになると思います。

洗剤を使わないことが究極のナチュラルクリーニング

本橋さんがナチュラルクリーニングを始めたきっかけはなんだったんですか?

子どものころにアトピーがひどくて、肌に合わない化粧品や洗剤がたくさんありました。それで「そもそも中身って何でできているんだろう」と商品の成分表示を見るようになったんです。大学では化学の道に進み、中身の成分について専門的な知識を身につけ、卒業後は化学系の会社で化学薬品や合成洗剤をつくる立場を経験しました。

合成洗剤は何を使っているのか、どうつくっているのかなど自ずと詳しくなり、必ずしも人や環境にとって100%安全だとは言い切れないと感じました。その後結婚して家事を率先してするようになってから、家庭内にある洗剤について意外とよく知らない自分に気がついたんです。例えば台所用、お風呂用、トイレ用と別々の洗剤があるけど、何が違うんだろうと。調べてみるとそんなに違いがないんですよね。

ちょうど重曹が掃除に使えると知られ始めた時期だったこともあり、「どうしてケミカルな成分が入っていなくても、汚れが落ちるんだろう?」と疑問に思って汚れや洗剤について調べました。そのときに汚れにも酸性やアルカリ性など種類があること、種類にあった掃除をすれば簡単にきれいになることを知りました。

そうやって汚れや洗剤の成分に詳しくなったことが、ナチュラルクリーニングを始めたきっかけですね。決して掃除や洗濯が好きとか得意だったわけではないんです。

これからナチュラルクリーニングを始める人は、どんなことに気をつけるといいですか?

私自身が決して掃除好きではないこともあり、洗剤を使わなくても汚れが落ちるうちに掃除をしておくことが一番楽だと思います。究極のナチュラルクリーニングって、洗剤を使わないことではないかなと。

例えばお風呂掃除は最後に入った人がお湯が温かいうちに排水し、浴槽が温かい状態でこすり洗いをすると洗剤がなくても汚れは簡単に落ちます。お湯が冷めるまで放置すると、雑菌が繁殖したり汚れが冷えて固まって落ちにくくなったりして洗剤が必要になってきます。早めに洗う、汚れをためないことがポイントですね。

たしかに。洗剤を使わないで済むのであれば、その方が人にも環境にもいいですよね。

そうは言っても、毎回そんな余裕がない人もいるでしょう。汚れや洗剤の種類を考える前に、できる工夫があることを知っておくのも大事ですね。汚れを落とすには強い洗剤を使うより、洗う水の温度を上げることで汚れ落ちがよくなることもあります。冷たい水で落ちない油汚れが、お湯で洗うと落ちる経験をされた方もいると思います。

あとは感染症の流行によって消毒用のアルコールがすごく身近なものになっていますが、これが意外と掃除のいろんな場面で使えます。アルコールが優れているのは、消毒効果に加えて油を溶かす力があること。だから油汚れの拭き取りにとても便利ですし、拭くと同時に除菌や消毒もできてしまいます。アルコールは揮発すると何も残らないので、拭き取りの手間もいりません。家に消毒用のアルコールやエタノールをお持ちの方は、掃除にも活用していただくとすごく楽になりますよ。

食事の前後にダイニングテーブルを拭くときにも、アルコールを使えば汚れを落とすと同時に除菌もできるので、小さいお子さんがテーブルにこぼしたものをまた口に入れることがあっても安心ですよね。単に汚れを落とすだけでなく、除菌までできる点でもアルコールは優秀な洗剤です。

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INTERVIEW & TEXT BY TOMOHIRO NAKATATE
PHOTOGRAPHS BY HIROE MOTOHASHI

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