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2021.09.30

幸せが循環するモノづくりを。エシカルファッションデザイナー小森優美さんが描くサステナブルな社会

with who?

株式会社HighLogic代表取締役 / 一般社団法人TSUNAGU代表理事 / エシカルファッションデザイナー

小森優美

草木染めランジェリーブランド“Liv:ra(リブラ)”のデザイナーとして自身の自己表現を探求すると同時に、一般社団法人TSUNAGUでは個人の心の変容から起こっていく本質的な社会変革を目指す実践的なラボを運営中。幸せな感覚から生まれる直感的なインスピレーションに従って、プロダクトデザイン、システムデザイン、講義・講演など、エシカルファッションを軸に多分野で活動する。

「個人の心の変容によってしか、社会変革は起こらない」

前回の記事では心の変容とはそもそもなんなのか、変容が起きることで自分自身にはどんな変化が起きるのかについて、自身の経験を振り返りながら話してくれた小森優美さん。

今回はそこからさらに、個人の心の変容が起きたときに、社会はどう変わっていくのか。とりわけ、サステナブルな社会はどうやったら実現できるのか。小森さんが創業された草木染めランジェリーブランド『Liv:ra(リブラ)』の活動の変遷に触れながら、社会変革の本質を探ってみました。

心の変容によって起こる、体と社会の変化

心の変容によってしか、社会変革は起きていかないとの話でしたが、心が変わると他にどんな変化が起きると思いますか?例えば心が変わると、体も変わるといったことはあるのでしょうか。

心と体は完全に連動していますよね。自分の感情とうまく向き合えなかったために、そのとき感じたことによる緊張が体にずっと残り続けることもあります。これまで心の変容からのアプローチについて話してきましたが、体に溜まっている緊張を解放していくと心も変わっていくので、入り口はどちらでもいいと思うんです。心からでも体からでもいいし、両方のアプローチを使えるなら、なおいいですし。

一人ひとりの心や体がいい方向に変わっていった先には、どんな社会があると思いますか?

個人がちゃんと心と向き合って自分の人生を変えていくと、どんどん自由になっていきます。自由になるとクリエイティブなアイディアが出たりユニークな動きができたりと、往来の価値観に囚われない活動や表現ができるようになってくる。そうなると、社会全体もいろんな人がいて、ものすごくカラフルでそれぞれ勝手にやってるような状態になる。

一人ひとりは勝手にやっているんだけど、全体では調和している。それが結果的に揺るぎない社会の基盤をつくり、社会を持続可能にしていくと思っていて。つまり「サステナブルな社会」はあくまで結果なんですよね。狙ってやるものではないし、狙ったら失敗するものでもある。いかに個人が今抱えている固定概念から外れて自由になっていくかが、社会変革の重要な要素だと思います。

©Taishi Takahashi/Greenpeace

サステナブルな社会を狙って実現しようとすると失敗するのは、どうしてなのでしょうか。

例えば脱炭素社会という目標を目指して、CO2を削減しようとするじゃないですか。車はCO2を排出するから、よりエコな電気自動車に変えようと。でも電気自動車もエネルギーを必要とするので、そのために森林伐採を進めて太陽光パネルを設置している。果たしてそれは本当にサステナブルと言えるのでしょうか。

他にもプラスチックをやめて紙や布にしたとしても、使い捨てるのであれば森林伐採を推進することになり、結局地球環境に負荷をかけることは変わりません。

CO2が悪いとかプラスチックがよくないとか、それはある側面では事実ですが、何かしらの目的を決めて1つの問題にフォーカスしすぎると、どうしても全体性を見失ってしまい本質から離れていってしまう。これがなくなったらサステナブルですと狙いを定めてしまうと、必ず違うところで違う問題が生まれ続けている。課題解決を目的化すると、問題が生まれ続ける構造になってしまうので失敗すると思っています。

自分の喜びを追求すれば、いい循環が生まれる

課題を目的化すると解決できないとすると、小森さん自身はエシカルファッションの分野でどのように課題と向き合い取り組まれてきたんですか?

草木染めランジェリーブランドLiv:raに関してはまだまだ発展途上ですけど、自分の本当にやりたいことを形にできる仕組みをつくっていて、自分の喜びや幸せのためにやっているという観点が強いんですよね。そのことが結果的に、いろんなことをよくしていて。

Liv:raは無農薬の花やシルクを使って草木染めをする「自然を大切にする観点」と、工房や生産者にきちんとした対価をお支払いする「フェアトレードの観点」があるんですけど、戦略的に狙ってやっているわけではなく、自分の喜びを追求していった結果していることなんですよね。自分自身の喜びと繋がっていった結果、徐々に人や自然にも還元されるような仕組みをつくることができていて。

クオリティをどんどんあげることができる仕組みでもあるので、長期的に見れば小さくてもいろんなものが循環する「本物の循環」をつくれると思っています。サステナブルなブランドをつくることを目的にするのではなく、自分の本当の幸せと繋がってものづくりをすると、最終的にすごくいい循環ができる。そんな想いでLiv:raは運営しています。

自分の幸せと繋がって取り組めば、どんな人がやっても循環をつくることができるんでしょうか?

一言で循環と言っても、お金の循環もあれば農家さんのように土壌の栄養素を循環させることなど、いろんな循環があります。どんな人がやっても循環はつくりだせると思いますが、どんなものが生まれるかまではやってみるまで本当にわからない世界だとも思います。ただ、それぞれが本当に自分がやりたいことをやった先に、一つひとつは小さくて一見バラバラなように見えるけれど、うまく繋がりあって循環が生まれていく。そうするうちに個人の存在を超えて、大きな循環の中に個々人が含まれていく流れが起きる気がしています。

こだわりのある小さなビジネスが増えることが、サステナブルな社会の鍵

Liv:raはどんな仕組みなんですか?

ファッションビジネスは基本的には在庫を積まないといけないシステムなんです。まだお客様に商品を見せていない状態から、これは売れるんじゃないかと予想してお店に置いている。特にファッションは趣味嗜好が激しい世界なので、売ってみるまで売れるかわからないのに、商品を先に用意する必要があるわけです。だから失敗したら、めちゃくちゃ余るんですよね。

昔はそれでもつくれば売れていた時代があったのですが、今はそんなに売れないので勝つのが難しいギャンブルを仕組み上強いられているような状態です。最近よくファッション業界から服の大量廃棄が出ているという話がありますが、当たり前といえば当たり前です。そういう仕組みなんですから。

だから、既存の仕組みの中でサステナビリティを目指すとしても、環境に配慮した素材に変えたところで結局いくらかは余って廃棄される懸念が強いです。新しく農地を開拓してオーガニックコットンをつくったとしても、つくり過ぎたら環境にいい影響は与えません。どんなにいいものでも、たくさんつくると弊害が出てしまいます。

個人的には今の仕組みのまま素材だけ変えるとか、最低賃金を払うとか、そうしたやり方だけではサステナビリティはまったく達成できないと感じています。では何が必要かというと、既存のシステムから抜け出すこと。本当にいいものを、必要な分だけつくる。環境によくて生産者の人権が担保されているものを、必要な数だけ売る仕組みにシフトしていかないと、部分的に何かをよくするだけでは全然通用しなくなっていると感じています。Liv:raはそういった考えのもと、ほぼ受注生産制にしています。

成長や発展することが既存のシステムの前提になっていますよね。Liv:raは最初からそうしたシステムから抜け出すことを考えていたんですか?

私も最初は社会企業家としてやっていきたかったので、事業をスケールさせることを考えていたんです。社会を変えるなら売上10億円程度のインパクトは最低限必要だと言われていたので。

でも、Liv:raが使っているのは無農薬の染料とシルク。市場にほとんどないものなんですよ。同じサステナブル素材でもリサイクルポリエステルなど人工のものは安定していますが、私たちがやっている草木染めや日本製のシルクなどの自然由来のものづくりは不安定なもの。事業が拡大するほど、リスクも上がるんです。例えば、台風が染料の産地を直撃したら、もうその年はその染料をつくれないこともあります。

だから、たくさんつくり、納品予定先を確保して、そのために染料や生地を用意するという大量生産の仕組みをつくってしまうと、確保するためにものすごく頑張らないといけない。しかも十分なクオリティを確保できない可能性も常につきまとう。最悪の場合、発注が全部なくなるといったトラブルも十分あり得るわけです。

他にも、規模が大きくなるほどクレーム対応が必要になる可能性もあります。Liv:raというブランドが好きで、コンセプトや商品のことを理解してくださる方に買っていただきたい。草木染めはどうしても時間が経つと色落ちしてしまいます。今のお客様に色落ちに対して不良品だと言う方はいらっしゃらないんですけど、事業が拡大するとそういったクレームが来る可能性はとても高いと思っていて。すると、返品対応などリスク対応に追われてしまうことになります。

想いが伝わっていないと、齟齬が生まれてしまうと。

それは本意ではないんですよね。Liv:raで自分が本当に大切にしたいことの1つは、自然な染料を使うこと。もちろん農薬を使って化学染料を少し入れれば、大量の染料をつくることはできます。でもそれは自分のポリシーではないんです。だから、自分の本当に大切にしたい想いを守るために、拡大する選択肢を取っていません。

そういう意味で、ナチュラルなものにこだわればこだわるほど、拡大する選択は取れないような気がしています。ある程度サステナブルなものを大量に生産することは可能かもしれませんが、私自身はそういった方向性にあまり興味がありません。そうしたことよりは、本当にこだわった小さなビジネスがどんどん増えていくことが、サステナブルな社会をつくるためには重要だと思います。

小森さんはこれからサステナブルな社会をつくる上で、どんなことに取り組みたいですか?

まずはLiv:raをよりいいブランドにしていきたいですね。いずれ農園を持って、シルクや染料を自分たちでつくれるようにできたらと思っています。シルクの養蚕に必要な桑の木と染料を植えて、土づくりから始めたいんです。そのために最近東京から京都に引っ越しもしました。本当にちゃんと循環していく仕組みの中で、ものをつくっていきたい想いが強くなってきていて。とても時間がかかることかもしれないですが、まずは農業から始めていけたらと思っています。

Liv:raのランジェリーのレースは補強とファッション性のために現状化学繊維を使っているのですが、技術が進んできているおかげで、あと数年で植物性のレースがつくれそうなんです。その上で自分たちで育てたシルクや染料を使って、糸から下着がつくれたら私にとってはそれは「本物の循環」になるので、挑戦していきたいですね。

あとは私自身心の変容をずっと大事にして自分の人生をつくってきて、結果としてLiv:raはスケールできない状態ですが、Liv:raで自分が向き合ってきたことを伝えて本当に自分のやりたいことを実現していく人を支援すれば、自立した個人の集合体により1つの事業のスケール以上の変革が起こっていくと信じています。そのために、2021年に心の変容から起こる社会変革を探求する『TSUNAGU FASHION LABORATORY』を立ち上げました。社会変革を起こすために、自分と向き合うところから始める人を増やしていきたいと思っています。



INTERVIEW & TEXT BY TOMOHIRO NAKATATE
PHOTOGRAPHS BY Shunzo Tanaka(TOP画像), HighLogic

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