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2021.09.28

自分の幸せを大切にすれば社会は変わる。エシカルファッションデザイナー小森優美さんが考える、心の変容

with who?

株式会社HighLogic代表取締役 / 一般社団法人TSUNAGU代表理事 / エシカルファッションデザイナー

小森優美

草木染めランジェリーブランド“Liv:ra(リブラ)”のデザイナーとして自身の自己表現を探求すると同時に、一般社団法人TSUNAGUでは個人の心の変容から起こっていく本質的な社会変革を目指す実践的なラボを運営中。幸せな感覚から生まれる直感的なインスピレーションに従って、プロダクトデザイン、システムデザイン、講義・講演など、エシカルファッションを軸に多分野で活動する。

人と自然が調和し、地球環境をよりよくしていくためには、どうしたらいいのか。
個人の心のあり方と、社会を変えていくことはどう結びつくのか。

エシカルファッションが昨今ほど一般的でなかった2013年に立ち上がった草木染めランジェリーブランド『Liv:ra(リブラ)』。代表兼エシカルファッションデザイナーの小森優美さんは自身の心と向き合いながら、人や地球と調和したファッションや事業のあり方を模索しています。また一般社団法人TSUNAGUでは、個人の心の変容から起きていく本質的な社会変革を目指すラボを創業し運営中。

「Liv:raを創業してからずっと、人生の最大のテーマは『心の変容』でした」と語る小森さんに、心の変容から起こる社会変革について伺いました。

心の変容とは、傷ついている自分と向き合うこと

まずは小森さんが考える「心の変容」について教えてください。

心の変容はいろんな言葉で表すことができますが、わかりやすくお伝えすると自分の視点を変化させていくことだと思います。今自分が持っている視点だけからものごとを見ると、問題を解決することはできません。問題が起きたときに視点を変えてみることで、その問題を乗り越えられる経験を個人的に何度もしてきました。振り返ると私の人生においてずっとやってきたのは、視点をよりよく変えていくことだったんですよね。

その結果自分の人生が変化していく中で、同じことが社会にもあてはまると気づきました。国民や全人類といった大きな規模の問題になったとしても、やはり今持っている視点だけでは解決は難しい。自分たちが変わらないまま、サステナブルな社会をつくることはできません。問題が解決された世界は、私たち一人ひとりが囚われている問題から解放された先にあるんです。

私の言う心の変容は、自分が囚われている問題から解放されて視点が変わるのと同時に、その新しい視点から選択する行動によって社会変革が起こっていくことです。本当の社会変革は、個人の心のありようが変わることからしか起こらないと思っています。だから私は社会変革を本気で起こすために、心の変容という言葉をよく使っています。

視点をどのように変えると、社会変革につながると思いますか?

まず誰しもが常識や親から受け継いだこと、自身の経験によるトラウマから起こる固定概念に多かれ少なかれ囚われている状態です。その大きな要因として、自身の内側に存在している心の傷があります。見たくない自分の心の傷などを見ないようにした結果、それらが癒されないままこんがらがってしまい、本質が見えなくなっているのが今の世の中だったり自分の状態。

心の変容とは、本来の自分ではない、傷ついている自分と向き合うこととも言えます。自分で傷を癒し新しい視点でものごとを見ることができれば、より自由度の高い新しい表現ができるようになるんですよね。そういう表現をする人が増えるほど、社会は変わっていく。だからまずは一人ひとりがちゃんと心の傷や痛みを見ることが大事です。

実際に小森さんは自身の傷や痛みとどう向き合ったんですか?

私が立ち上げた草木染めランジェリーブランド『Liv:ra』は2013年に始めて、2016年には東京の下北沢で店舗も出しました。当時は今ほどエシカルファッションが認知されていなかったので、お店を持つことは大変だったんです。

店舗を出したり、有名なショップに卸したり、百貨店でポップアップショップを出したりといったアパレルの一般的な運営の仕方をすると、めちゃくちゃきつくて。コストもかさみますし、労力もかかるけど利益は少しという状態が続いていたんです。もちろん私の実力不足もあるのですが、Liv:raが特殊だったわけではなく、当時は同業他社さんも大変な状態でした。

特にエシカルファッションは、原価が高いものを高い値段で売るという、資本主義経済から外れたことをやっているので、手間も時間もかかりますし利益が少しなのは当たり前といえば当たり前なんですよ。Liv:raの場合は、よほど投資を受けて資金が潤沢でない限りは、そもそも持続可能な仕組みではなかったと思います。


同時に私は心の傷を持ちすぎていて、自信がなくて本来伝えるべきところで自分の意見を言えなかったり、周囲に気を使いすぎて方向性を明確にできなかったりと、事業を継続する上で円滑なコミュニケーションが難しいことがありました。

エシカルファッションの事業を継続する上で、仕組みの問題と私自身の心の問題、この2つの問題と同時に向き合う必要性が私にはあると気づいたんです。私は自分の心と向き合い、状況はすぐに変えることはできないけれど、自分はこの現実に対し、なぜ苦しみを感じているのか、なぜこんなにも傷ついているのか、自分が本当に大切にしたいことは何なのかを時間をかけて見つめていきました。

自身と向き合った結果、Liv:raはどう変わったんですか?

Liv:raは後に方針転換して、ほぼ受注生産で主に自社のECサイトで販売をしています。現在は消化率100%、廃棄ゼロでサステナブルに循環し、順調に利益も出ています。こういったビジネスモデルにして上手くいったのは私が戦略的だったからではなく、自分の内面と向き合い、大切にしたいことを明確にしていったからでした。もう少し言うと、自分の大切にしたいことを、思っているだけでなくハッキリと形にしたのです。

そうすることで、まず自分自身がすごく救われていきました。私は心に向き合い、心に従った行動を明確に取ることで、心と仕組みの2つの問題も同時に乗り越えることができたのです。方針転換する前のモデルで苦労していたことが一切なくなって、自分が本当に望んでいるやりたいことに集中できる時間も増えましたし、ブランドのクオリティも上がってお客様にもメリットを提供できるようになって、気持ち的にも経済的にもいい循環が生まれました。そうやって私自身が幸せを感じることで、結果的に、前よりも社会に良い影響を与えられていると感じます。この経験から、自分自身の意識が変われば、現実も変わっていくことを身を持って知りました。

見たくないことに向き合うための仲間の存在

自分の内面と向き合い、大切にしたいことを形にすることは、言うほど簡単ではないと思います。実際に現状から切り替えていくとき、どんなことが起きましたか?

たしかに大変でしたね。感情と向き合う必要があるので、その部分ではやっぱり楽ではないですよ。だからこそ多くの人は、見たくないものは見ないふりをしてやり過ごします。向き合うには勇気と忍耐が必要なんです。でも短期的に見たらしんどさはありますが、ものごとを長期的に捉えると、今向き合う必要があることは理解できるんですよね。だからこそ、最終的に見たくないものにちゃんと向き合おうという気持ちになれます。

内省的なプロセスは痛みも伴います。幸せを感じることもあるけれど、修行的な要素もある。ただ、やればやるほど人生すべてがよりよくなっていくのを感じますし、自分の意識が変わってくると傷と向き合うプロセスにあまり囚われなくなってきます。痛みはあっても大丈夫、すべてうまくいっている、というように楽観的になってくる。だからやればやるほど楽になりますし、なにより自分が自分自身の囚われから解放される瞬間の感動は、何にも変えられない素晴らしさがあります。

続けていくと効果を実感できると。その最初の一歩目が重たいようにも感じるのですが、踏み出すためには何が後押しになると思いますか?

協力者や仲間がいることじゃないでしょうか。私自身、これまで話したような世界観で自分の内面を見る感覚を持つようになったのは、そうしたことをやっている仲間が周りに多かったからだと思うんです。まず一歩を踏み出すことはもちろん、継続していくためには近くに仲間がいることは大きな後押しになります。だから、自分がそうした仲間がいる環境に身を置く選択をすることは大事ですよね。一人では途中で心が折れて、絶対続かなかったと思います。

自分でいることを続けていけば、自分自身が確立される

自分の心と向き合い続けるときに、小森さんが意識していたり、取り組まれていたりすることはありますか。

正直さはすごく大事だと思います。何かに配慮したり遠慮したり、あの人は頑張っているから私も手伝おうかなとか、断れなくて無理してしまうとか。そういった気遣いや責任感だけでものごとを取り扱うと、結果的に自分にとっても相手にとってもためにならない。普段は聞き流して対応することでも、必要な時はちゃんとはっきり自分の意見を言うことですね。

これは相手に変わってほしいとか自分の意見に合わせてほしいという意味ではなく、自分のスタンスを遠慮せず常に持ち続けることがすごく大事だということです。ただ、スタンスを表明すると、残念ながら意見が違ったときには嫌われることもあると思います。でもその責任もちゃんと自分で持つことで、自分の「自分らしく生きる」ことを本当に大切にできる。

相手にどう思われようが、自分でいることを続けていくと、自分自身が確立されていく感じがするんです。だからまずは自分が正直にいることを、すごく大事にしています。すると自分との信頼関係が築けていって、揺るぎないものになっていく。その強さが、自分らしい自由な表現をすることにも繋がっていくと思います。

「嫌われたくない」という感情を捨てることって、決して簡単ではないと思うのですが、どう向き合われているんですか?

そうですよね。自分を優先することは、相手を大切にしないという意味ではないんです。お互いの考えや価値観を尊重しあい、関係性をつくる。相手を変えようとせず、同時に自分も自分らしくいる。そういったスタンスをとっていると、相手の考えや感じ方をコントロールしようといった執着がなくなっていきます。

相手がどう感じるのかって、こちらが一切コントロールできないじゃないですか。気を使って嫌われないようにしたとしても、嫌われることだってありますよね。

たしかに…。

もし気を使って嫌われないようにした上で維持できている関係性で、気を使うことを辞めたら切れるくらいのご縁なら、そもそも一緒にいる必要はないと思うんです。それぐらいのご縁だったといったある種の潔さも必要かなと。

ずっと人に嫌われないように行動してきた人にとっては、自分の傷や痛みと向き合い、正直さを選択することは楽ではないかもしれません。でも本当に自分の気持ちを優先させて丁寧に選択していくと、ありのままで受け入れてくれる人が周りに増えていく。人間関係もより自然な状態に変化していくから、ものすごく楽になるし楽しくなります。

だから、嫌われたくないと思っていろんな気を使っている人がいたとしたら、それは「本当の自分だと受け入れてもらえない」という固定概念に囚われているだけで、本来ならありのままでYesもNoもはっきりと言える人間関係をつくることはできると思うんですよね。最初は勇気のいることかもしれませんが、自分に正直に生きることをおすすめします。

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INTERVIEW & TEXT BY TOMOHIRO NAKATATE
PHOTOGRAPHS BY HighLogic

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