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2021.09.17

一人ひとりの意思表示こそが社会を変えていく。「エシカル消費」から考える理想との向き合い方

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一般社団法人エシカル協会 理事 / 株式会社オウルズコンサルティンググループ プリンシパル

大久保 明日奈

金融機関、ITアドバイザリーファーム、デロイト トーマツ コンサルティング合同会社を経て現職。株式会社オウルズコンサルティンググループ在籍。慶應義塾大学経済学部卒業。英国ユニバーシティカレッジロンドン(UCL)都市開発経済学修士課程修了。デロイト トーマツ コンサルティングでは、民間企業のサステナビリティ戦略立案や経済産業省のASEAN地域を対象とした政策立案など多岐にわたるプロジェクトに従事。 NPO/NGOの事業計画策定、NPO法人と連携したガーナにおける児童労働廃絶の仕組み作りなどにも携わる。Social Impact委員会の事務局運営も担当。エシカル協会にはコンサルタントとして関与した後、2020年9月に理事就任。現在在籍しているオウルズコンサルティンググループでは、ビジネス戦略、サステナビリティ戦略をテーマとするプロジェクトに従事。労働・人権分野の国際規格「SA8000」基礎監査人コース修了。

エシカルとは自分のものさしを持って、人や社会、地球環境への影響を考えていくこと。

前回の記事では「エシカル」という考え方について、エシカル協会理事の大久保明日奈さんの経験を交えながら語ってもらいました。

エシカルについて理解が進んだ上で、どのように実践していくのか。エシカルな行動を続けていくときの自分や理想との向き合い方について、訊いてみました。

一人ひとりの選択が、社会の未来をつくる

前回の記事ではエシカルとは「自分のものさしで考えること」だとお話いただきました。「エシカル消費」は考えた結果の1つの行動だとすると、どんな消費行動なのでしょうか。

消費は「消えて費やす」と書くので、エシカルと組み合わせるのはどうなのかという意見をいただくことはあります。このことに関しては、ものを買うか買わないか、そもそも自分に必要なものかどうかの意思決定も含めて、エシカル消費だと捉えていただけると考えやすいかと思います。

何か環境にいいものを買ってくださいという話ではなく、今あるものを修理して使ったり、アップサイクルしたりなど、そういった活動を含め消費者としての意思表示をすることが「エシカル消費」なんです。

文字通り「消費」することが大事なのではなく、意思表示をすることが大事なんですね。

「買い物は投票」という言葉もありますが、やっぱり消費者一人ひとりの意思決定は非常に大事だと思っているんですよね。例えば最近、スーパーマーケットで平飼い卵を見る機会が増えてきたと感じています。きっと消費者がそういうものを欲しいと思っているから、スーパーも置くようになっているのではないかと。身近なところからでも少しずつ、変化は起こせるんじゃないかなと思っています。

一人ひとりの選択は微々たるものかもしれないけれど、意思表示は必ず企業にも伝わっていく。例えばとある大手スーパーは、消費者の声を取り入れてサステナブルな商品を多数展開し始めました。一人の声は小さいかもしれないけれど、それが100人になり1000人になっていくと、社会を変える力になると思うんです。ひいては、私たちがつくりたい未来にもつながっていくと思うと、今の自分たちが取る選択が未来をつくっているんだと感じます。

誰が一人の声がどんどん人を巻き込んでいくためには、どんな行動が必要になるのでしょうか。

例えば私たちエシカル協会は『エシカル・コンシェルジュ講座』を運営していて、受講者同士がSNSでグループをつくって交流されているんですよね。そこでは「この企業の取り組みすごくいいですね」「こんないい商品がありました」「このブランド、ちょっとどうなんだろう」といった情報交換がされてます。中にはやりとりの結果、企業に商品について問い合わせをする人が出てきたり。そうやって自分が感じたよさや疑問をシェアして、身近な人の行動が少しでも変わることが、緩やかな連帯になっていくと感じています。実践を始めるのは、どんなテーマからでも、どんな行動からでもいいと思うんですよね。

エシカルな行動をしていくと、その人自身にはどんな影響があると思いますか。

私自身はエシカルという概念を知って、食べものにすごく気を遣うようになりました。だから、野菜も少し高くはなりますけど、できれば環境を傷めないオーガニックや農薬の使用を控えたものを選んで買うようにしています。自分で料理をするようにもなり、体は健康になったと感じています。単純にポジティブな気持ちで日々過ごしていると、体も軽いですね。

自分のものさしを磨き続ける

グリーンウオッシュやSDGsウォッシュなど、「あたかも環境やSDGsのこと取り組んでいるように見えて、実際は違った」といったことも起きています。行動する中でこうしたことに加担しないためには、どうしたらいいのでしょうか。

最終的には自分の中のものさし、判断基準を磨いていくことに尽きると思います。いろんな情報がある中で、自分の中でちゃんと理解して腑に落としていく。そのためのアプローチの一つとして、商品だけでなく企業のスタンスを見るのも参考になります。

例えば、すごくサステナブルをうたってるブランドがある一方、同じ会社の別のブランドは違うことがあります。それ自体が悪いとすぐに断定すべきではありませんが、企業としてどんなスタンスなのか、一つの判断材料にはなると思います。「ウォッシュ」は得てして表面的にやっていることなので、企業のスタンスと実際のサービスや活動が一貫しているか、企業のホームページやサステナブルな情報を掲載しているメディアなどを見て考えていくことが大事です。

大久保さんから見て、ちゃんとエシカルな活動をしている企業はありますか。

私たちがエシカルなファッションブランドとしてよく例にあげるのが、『ピープルツリー』です。日本でのフェアトレードの草分け的存在で、生産者に適切な賃金を払い、どんな人たちが携わっているのかホームページ上で情報開示しています。こうした企業について知ることも、判断基準を磨く上で一つ参考になると思います。

一過性の行動より、小さくても続けることが大事

大久保さん自身はエシカルという考え方を知って、どんな行動をしていますか。

私もエシカルについて知るまで、例えば動物福祉の問題をちゃんとは知らなかったんですよね。それからは、卵を買うときは高くても平飼い卵を買うようにしています。他にも以前はファストファッションをたくさん買っていたのですが、サプライチェーンの問題を知ってからは、そもそも必要なのか考えて買うかどうかを決めるようになりました。

あとは、できるだけ自分が納得できる背景で作られたものを買うようにしています。こうした変化はいきなり起きたわけではなく、徐々に自分の行動が変わっていきました。ただ、全ての行動で自分の理想としていることができているかというと、未だになかなか難しいのが正直なところです。無理なく、ステップバイステップでこれからも自分の行動を変えていけたらと思っています。

理想としていることができないとき、できていない自分に対して罪悪感や後ろめたさを感じたりはしませんか。

エシカルに考えることや生活に取り入れる行動自体が、持続可能じゃないといけないと思うんです。何かやらなきゃいけない、完璧にやらなきゃいけないとプレッシャーに感じてしまって、むしろ、取り組むこと自体がストレスになってしまうと続かないですよね。自分が楽しめていないと、恐らくどこかで反動が来てしまうと思うんです。

だから仮に罪悪感を抱えてしまっても、抱えている自分をありのまま受け止めることも必要ではないでしょうか。その気持ちを抱えているだけでも、褒めてあげるということかもしれません。罪悪感を抱えること自体、その大事さを感じている証拠ともいえるのではないかと思います。


フォーラムでの講演活動の様子

まずは自分を認め受け入れてあげることが大切だと。

とはいえ、気候変動に関しては早めの対策がすごく必要とされているので、世代として早急に取り組んでいく必要があると感じる人もいるでしょう。ただ気候変動など大きなテーマに関しては、企業や政府などプレイヤーも多いので、まずは自分自身が楽しんで行動することに目を向けたほうが、取り組みやすいと感じています。

できるところから少しずつ始めていって、それがずーっと続いていくことも価値があると思うんですよね。1カ月だけすごくエシカルな取り組みができても、その後限界がきて元の生活スタイルに戻ってしまうより、小さいことでも続けている方が、長い期間でみるといい社会に近づけているのではないかなと。できることを徐々に増やしていくことも、エシカルの第一歩です。



INTERVIEW & TEXT BY TOMOHIRO NAKATATE
PHOTOGRAPHS BY ETHICAL ASSOCIATION

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