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2021.07.14

ベストではなくマッチベターなものから。MiYO-organic-が目指すサステナブルな暮らし

with who?

ライフスタイルブランド 「MiYO-organic-」代表

山本 美代

外資系医療会社デンタル事業部、HUGE PR、CRYSTAL LINE ウェディングコーディネーター、シンガポール食器ブランド「Luzenre」ブランドプロデューサーを経て、2017年創業44年の店舗プロデュース会社『株式会社豊和』の事業部として『DINING+』を立ち上げる。2020年には食器ソムリエ協会を立上げ、これまでの知識と経験を元にしたカリキュラムで構成した「食器ソムリエ講座」を開講している。また、サステナブルな未来を目指しオーガニックな竹製歯ブラシブランド『MiYO-organic-』をスタート。2020年4月からはサステナブルなテイクアウト容器に特化したオンラインショップ『DINING+ SUSTAINABLE』を立ち上げ、飲食店の環境配慮への取り組みをサポートしている。

完璧を求めすぎると、途方に暮れてしまい動けなくなるーー。

サステナビリティや地球環境への配慮が大事だと頭ではわかっていても、一挙手一頭足徹底するには心が追いつかないこともある。

商品の作り手も同じ課題に直面している。100%オーガニックの竹歯ブラシを開発した「MiYO-organic-」もその当事者だ。

今すぐ「ベスト」な答えを出せなくても、今よりも「マッチベター」にする。それを足がかりにベストに向かっていく。そんな背中を見せてくれるのが、サステナブルブランド「MiYO-organic-」。100%環境にいいものを目指してひた走る、代表の山本美代さんに話を伺いました。

100%環境にいい歯ブラシを作る挑戦

環境にいい歯ブラシを作る上で、素材を竹か生分解性プラスチック(以下、PLA)で悩まれたそうですね。どんな違いがあるんですか?

「生分解性」と聞くと環境にいいイメージがありますが、実際は一定の条件のもとでしか生分解しません。例えばマイクロプラスチック問題が起きている海では、温度の関係で分解されにくい。

他にも生分解性の商品であっても、どう処理するかはお客様次第じゃないですか。特にPLAは見た目がプラスチックなので、プラスチックと同じ処理をしてしまう可能性は低くないはず。もし同じ処理をしてしまうのであれば、結局素材の違いはいい影響を生んでいないですよね。

あとは何よりPLAは他の素材と比べてダントツで高いです。プラスチックの成形には金型が必要なのですが、生分解性の素材は一般的なものと比べて原料がゆっくり流れるため、綺麗に流し込むのに工夫がいります。この金型を作るのに、かなりお金がかかるんですよ。

結果的に竹を選ばれましたが、どんな特徴があるんですか?

竹って植物の中でかなり成長が早い種で、3年で成長しきるほど。農薬や除草剤を使わなくても自然に再生し、適切に管理をすれば繰り返し利用ができることから、循環性資源として注目されています。何より竹の風合いや自然の香りは、使っていてとても心地よかったのが選定理由として大きいですね。

竹で作ると決めてからは、どのように開発を進めたんですか。

歯ブラシを作ろうと思った瞬間から、「やらなければ」という使命感だけで動いてきました。当然歯ブラシを作った経験もなく、何もわからない状態からのスタート。まずは歯ブラシ工場をリストアップして、ひたすら上から順に電話をかけていきました。

その結果、当時日本には竹歯ブラシを作っている工場がないことがわかりました。そこで歯ブラシ工場に「竹で作ってみませんか?」と提案して回ったのですが、設備投資のハードルが高いこともあり実現することはありませんでした。

工場としては竹で作ることの難しさはどこにあるんですか?

歯ブラシはまず柄の部分から作ります。ブラシは柄の先にある「植毛穴」に毛を植えていくため、この植毛穴がいかに安定しているかが歩留まりのよさ、つまり不良品が出るかどうかの割合に大きく影響するんです。

一般的にブラシの柄に使われているのはプラスチック。素材としてすごく安定していて、価格も安く大量生産に向いています。ところが、竹は自然素材なので品質をコントロールすることが難しい。例えば、植毛穴の部分に竹の節がきてブラシの毛が曲がって入ってしまうと、歩留まりが悪くなります。工場としてはロスもリスクも大きいんですよね。

ただ、私たちとしては一見ネガティブに見えることをよさとして捉えて、新たな発想とクリエイティブの力でブレイクスルーしていきたいという想いがあって。一緒にチャレンジしてくれる工場を探し続けました。最終的に今の商品は中国で作っています。

どんな新しい発想が生まれましたか?

日本歯科医師会によると歯ブラシには目に見えない雑菌がたくさんあるので、1ヶ月に1回を目安に交換したほうがいいそうです。一方、竹は自然素材なのでカビてしまいます。1ヶ月そこらでカビることはありませんが、定期的な交換は必要になります。竹は安定性ではプラスチックに劣りますが、目に見えて変化するからこそのよさもあるのかなと感じています。

環境に配慮したものを作ってみて、何か気づいたことや考え方が変わったことはありますか。

もちろん100%環境にいいものを目指して作っています。ただ現状ブラシには、ナイロン6というプラスチック素材を使用しています。BPAフリー(註)で環境ホルモンが出ないものではありますが、プラスチックフリーではありません。

ブラシを生分解性にしたり、ヴィーガンではなくなりますが動物の毛を使うという選択肢もありました。でもそうするとコストがすごく上がってしまったり、歩留まりが悪くなったり。また生分解性の場合、長期保存時にブラシの毛が劣化してしまうリスクも高くなります。

そういったことを考慮すると、まずはどこに目標を置くのかが大事なのではと考えるようになりました。ファーストステップとしては「ベスト」なものではなくとも、現状よりも「マッチベター」なものを作り認知してもらう。それからどんどん商品改良していくプロセスを踏みたいと思ったんです。多くの人の日常生活において、まずは竹歯ブラシがリアルな選択肢になってもらうことを優先させました。

もちろん常に前進する姿勢は忘れていないですし、今の商品に満足しているわけではありません。新しい技術や情報にも目を向けていきながら、「これで完成じゃないぞ」というスタンスでこれからもモノづくりに取り組んでいきたいなと思っています。

註:BPAとはビスフェノールAという化学物質のこと。ポリカーボネートやエポキシ樹脂などのプラスチック原料となる。

日本のはるか先を行く中国の竹生産現場

MiYO-organic-の工場近くの竹林

今後どんな改善をしていきたいですか?

長期的には日本の竹で作りたいと思っています。日本にある竹林はほとんど生産用に管理されていません。1年目から10年目までの竹が乱立しているなど、目利きができる人でも判別は難しい。そんな状態で安定して竹を使ってモノづくりをするのは大変です。

だからといって、今ある竹林をまっさらにしてイチからやり直すのも現実的ではありません。竹を取り巻く問題って私たちみたいな小さな1企業だけでは変えられない、大きな問題なんです。こうした問題にも竹歯ブラシをきっかけに、徐々に変えていきたいと思っています。

中国産と聞くと不安に感じる人もいると思うのですが、山本さんは中国の産地も視察されていますよね。実際に現場を見られて品質や管理方法などどう感じていますか?

中国に視察に行って、びっくりしたんですよ。すごくしっかり管理されていました。中国の竹業界は技術力や資本力もあり、機材も充実していて最近だとAI導入が進んでいる工場も多いです。政府の後押しもあって、ゆくゆくは全工程で機械生産できるようにしていくそうです。すでに加工はほとんど自動で行われますし、竹林も竹の年数ごとに細かく管理されていました。働いている人の健康にも配慮されていて、加工する際に出る竹の粉が肺に入らないような取り組みもあって。関心することばかりでした。

背景として、世界中の竹需要が中国に集まっています。竹がたくさんあり、安定して大量生産できる体制がある。売れるので儲けることができ、投資もできて管理もできる。そんな好循環が中国にはあるのだなと。中国産だから一概にNGとは言えない、むしろ中国の方がはるかに進んでいるというのが実際に行ってみて感じたことですね。

でもそうは言っても、不良品がまったく出ないなんてことはありません。歯ブラシは口に入れるもので、安全性の担保が非常に重要な商品。そのため中国で生産したあと、日本で私たちが一つひとつ検品しパッケージに入れて出荷しています。

中国の産地にて孟宗竹を持ち上げる山本さん


MiYO-organic-の竹は無添加と表記されています。これはどういうことですか?

竹自体はもちろんオーガニックです。竹は虫が入ったりカビたりするので、切った後に防カビ剤に浸したり漂白剤に入れたりしてから製品化するのが一般的なんです。ただ私たちがご一緒している工場ではそういった薬品は一切入れず、レーザー照射によってカビの処理を行なっています。

他にも、通常ツルツルにするために塗料をぬることが多いのですが、私たちは歯ブラシの形に加工した後ドラム缶のような形をしたものに入れて、8時間くらいガラガラと回します。すると竹同士が擦れ合って、竹の中に微量に含まれている油でツヤツヤになるんです。油を塗ってるんですかとよく聞かれるのですが、天然のツヤなんですよ。

「MiYO-organic-」というブランド名にこめた決意

そもそもなぜ竹歯ブラシを作ろうと思ったんですか?

あるとき出張でホテルに泊まった際、アメニティの歯ブラシで歯を磨きながらぼんやりと考え事をしていました。そのときふと、「この歯ブラシ、今日と明日の朝使ったら捨てるのか。もったいないな」と思ったんです。

泊まっていたホテルの客数は300室。満室であれば一晩で300本の歯ブラシが捨てられる。ホテルは世界中に無数にあります。いったいどれくらいのゴミを出しているのか、決して少なくない数であることはすぐにわかりました。

その後国内外のアメニティ業者に問い合わせてみたのですが、しっくりくるいい商品には出会えませんでした。だったら自分で作りたいと思って始めたんです。

歯ブラシ自体はよく目にするモノだと思いますが、どうしてそのとき気になったんですか。

私たちは普段、無意識のうちに「当たり前のメガネ」をかけてるのかなと思っていて。当たり前のメガネとは、気にしないってことなんですよ。当たり前だから、違和感を感じない。

一方、私がホテルで歯ブラシのことが気になったときは当たり前のメガネをかけてなかったんですよ。というのも、もともと実家が飲食店やホテル向けにアメニティやテイクアウト用品などを販売する仕事をしていて、ちょうど私も事業に参加した時期だったんです。以前から使い捨てプラスチックは嫌だなと思っていて、どうすれば環境に配慮したものができるんだろうと常に考えて過ごしていました。

当たり前のメガネを外しているときって、当たり前だと思うものに対して、「それって本当にそうなの?」というフィルターがかかる。それで当たり前のメガネをかけずにホテルの歯ブラシを見たときに、「おやっこれはもったいないぞ」と思ったんです。

環境に配慮したものを作りたいと思い始めたきっかけは何だったんですか。

5年ほど前に、プラスチックを使わない生活をしているオランダ人の友達の話を聞いたのがきっかけです。最近はSDGsもあって、環境に配慮した暮らしに関心がある人が増えたと思うんですが、彼女は当時から地球環境のことを憂いて行動していました。

話を聞いて日本で暮らしている自分と彼女との温度感の違いをすごく感じて、それから危機意識だけはずっと持っていたような気がします。その後実家の仕事に関わることになり、プラスチック製品を大量に扱っていたこともあって「この問題に取り組まないと」という責務を感じ始めました。

ブランド名は山本さんの名前からつけたんですか?

そうなんです。自分の名前をつけるのに抵抗感もありましたが、母から美代という名前には「美しいものを代々残していけるような女性になってほしい」との想いが込められていることを聞いて。このブランドでは「美しい地球を、次の世代に残していく」ことをコンセプトに据えたかったため、ピッタリだと感じてブランド名につけることにしたんです。

語尾にオーガニックを入れたのは、自分たちへのチャレンジですね。ブランド名に入れることで言い訳できなくなるじゃないですか。入れるかどうかすごく悩んだんですけど、やってみようと決意してつけました。

オーガニックの定義はいろいろありますが、山本さんにとって「オーガニック」とはなんだと思いますか。

畑によく行くのですが、必ず虫を見かけます。その虫がいるからこそ成り立っている世界があると思うんです。だとすれば、存在するすべてに意味があるじゃないですか。すべてに意味があって生態系が保たれている中で、プラスチックは地球が生まれたときにはなかったもの。だから、もとの状態に戻していくことの方が自然だと感じるんです。自然本来のあるがままな状態を「オーガニック」と考えているところがあるかもしれませんね。

みんなにとって「共通の地球」だと感じてもらう

山本さんは食器ソムリエとしても活躍されています。MiYO-organic-に活きてることや共通していることはありますか?

私の中では食器ソムリエの仕事とMiYO-organic-の仕事は全然違わないんですよ。イメージするものがあり、それを実現する方法があって、工場の作り手と一緒に取り組んで、クライアントやお客様にモノを届ける。一連のプロセスやフレームワークはまったく同じ。

おかしなことを言っているかもしれませんが、どの仕事でもいつもいろんな「点」をたくさん仕入れて、グルグルするんです。それから寝かせて待つ。するとポンっとなってひたすら走る。想いは自分の中からしか出てこないので、根本的な思想は基本的に同じ。表現として出てくるものが違うだけなんですよ。

歯ブラシでいうと、デザイン性やスタイリングといった観点は絶対に外せません。使っていてテンションが上がるかどうかなど、食器ソムリエをやっていたことが歯ブラシ作りには生きていると思います。

MiYO-organic-のビジョンに「私たちはこの地球に住む地球人だということ。みんながそれを意識すれば、世界は大きく変わると思います」というメッセージがありました。私たちCOMMEARTHが大事にしていることと重なるとも感じたのですが、どんな想いが込められていますか。

COMMEARTHのビジョンを聞いてとても共感したのですが、やっぱり「COMMON EARTH」なんですよ。共通の地球。その意識を持てた時点で、サステナブルがどうという問題じゃなくなると思うんです。だってみんなの共通のものじゃないですか。

だから、いかに多くの人が「共通の地球だよね」という視点を持てるかが大事だと思っていて。そのきっかけとして日用品である歯ブラシは、ファーストステップにしてもらいやすいのではないかと考えています。

いわゆる「意識が高いから」ではなく、人にも環境にもいいモノを使うことが、自分も地球に住んでるイチ人間なんだと感じることにつながっていく。MiYO-organic-の商品を使うことでテンションや自己肯定感が上がり、地球に配慮していることも感じてもらえたら嬉しいですね。



INTERVIEW & TEXT BY TOMOHIRO NAKATATE

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