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2021.06.03

他に負けない喜ばれるものを。“おいしい”を生み出し続ける食品製造会社「南華園」のこだわり

with who?

株式会社南華園 代表取締役

佐々木 泰男

函館生まれ。機械好きが高じて東京の機械メーカーに就職。その後1967年に札幌で南華園を創業。業務用ラーメンたれから始まり、今では総合食品加工メーカーとしてレトルト食品、缶詰、冷凍食品など幅広く製造する。50年以上培ってきたものづくりの精神を従業員に伝承しながら、アイディア溢れる新商品開発に日々取り組んでいる。

株式会社南華園 研究開発本部 商品企画開発 係長

菊地 未紗

札幌生まれ。大学で食品流通を学び、大手食品商社のマーケティング部で食にまつわる様々な経験を積む。食品製造に強い興味をもち、食品加工メーカー南華園の商品開発部門に就く。マーケティング力と抜群の味のセンスを生かし、パスタソースやカレーなど多数の製品を世に送り出している。

北の大地、札幌で半世紀以上にわたり数々の食品を開発してきた南華園。

企業のプライベートブランドの商品開発も手がけているため、ひょっとしたらこの記事を読んでいるあなたも、南華園の商品を口にしたことがあるかもしれません。

COMMEARTHは米澤文雄シェフとオリジナルパスタソースを開発するにあたり、南華園に製造をお願いしました。米澤シェフはミシュラン三ツ星店でスーシェフとして活躍され、現在はレストランにとどまらず多方面で活躍される超一流シェフ。こだわりが詰まったレシピを、どう実現していくのか。

食べてもらう相手が見える家庭料理とは異なり、万人に届けるための食品づくり。
それは卓越した技術と経験によってこそ完成するものでした。

普段なかなか見聞きすることのない食品製造の実態について、南華園創業者の佐々木泰男さんと、開発担当の菊地未紗さんにお話を伺いました。

二番煎じは嫌。おいしいと喜んでもらえる味を生み出すのが南華園

南華園は佐々木さんが1969年に創業された会社ですが、どんな経緯で立ち上げられたのでしょうか?

佐々木「わたしはそもそもね、東京でサラリーマンやってたんですよ。安立電気(註1)というテレビや通信機をつくっていた会社でものづくりをしていました。今でいう秋葉原の電気街によく行ってましたね。だから機械を触るのは好きなんですよ。

その後結婚したタイミングで仕事を辞めて、北海道出身だったこともあって札幌に戻ってきました。何か新しいことを始めたいと思い、食堂を始めたんです。といってもわたしは全然料理できないので、料理が上手な妻を誘って。わたしはただニコニコ食べてるだけです(笑)。それが南華園の始まりですね」

註1:現在のアンリツ株式会社


株式会社南華園 代表取締役 佐々木泰男さん。週末に大好きなゴルフをするために、週休2日制などなかった時代から工場は土日祝休みにしている。

当初はラーメン・中華店だったそうですね。

佐々木「当時ラーメン屋がすごく流行っていたんです。それでラーメンを出さないとダメだなと思って、どこにも負けないものをつくろうと。実際に妻と一緒につくって出したら、おいしいと評判でね。それで元気をもらって、小さいお店でやっているだけじゃ物足りなくなり、評価してくれるのであればこの味を売ろうとタレをつくったんです。それを札幌中のラーメン屋に営業しに渡り歩きました。

そしたらどんどん売れたんですよ。ただ面白いことにね、お店に行っても売れないんですよ。当時どこのラーメン屋に行っても『元祖』を掲げていて。お店にはスタッフもいるので、そこでラーメンどうですかと聞いても、当然断られるわけです。だって『元祖』ですから。既製品をスタッフの前で買うわけにはいきません。

でも後で電話がきて、『あれいくらするの?お店じゃなくて家に持ってきて』と連絡がくるんです。だからサンプルはいつも店主の自宅に届けたんですよ。食づくりは面白いなと思った瞬間でしたね」

どうして南華園さんのタレがうけたのでしょうか?

佐々木「なんにでも言えることですが、同じものではおもしろくないですよね。他に負けない喜ばれるものをつくることが、創業時から変わらないコンセプト。二番煎じは嫌。いわゆる、こだわりですね。それが他とちょっとだけ違うよねという味に仕上がったんだと思います。

半世紀以上続けてこれたのも、南華園の食品をおいしいと喜んでくれるみなさんが背中を押してくれたから。おいしいと言われると、もっと多くの人に喜んでもらいたいなって気持ちが湧くんですよ。現状で満足できればいいんですけど、わたしはできない性分みたいで(笑)」

こだわりの味を実現するために、製造機械から設計する

他社に負けないものにするために、工夫されていることはありますか。

佐々木「食のジャンルは和洋中やエスニックなどたくさんありますが、法律で決まった味やつくり方ってないんですね。南華園ではまず伝統のつくり方を学んでみて、その上でどうやったら味を変えずに工業製品としてつくれるかを試行錯誤します。その味を実現するためには自分で機械の設計からしますし、既存の機械でもメーカーと交渉して自分たち用にカスタマイズしてもらうことはよくありますよ」

機械設計からされているのは驚きです。

佐々木「技術畑出身なので、その経験が今も生きていますね。単純に機械をさわるのが好きというのもあって。機械って当たり前ですけど複雑なんですよ。例えばね、ラーメンスープをつくって液体だけ袋に入れるとするでしょう。すると、袋を閉じるところに液体が付着して、うまく噛み合わなくて閉じれないことが出てきます。

それだけ緻密な作業をしている中で、わたしたちは13mm〜15mm角の豆腐を入れるんです。しかも流れ作業でドバドバと。そんなことができる機械をつくっているの、日本でわたしくらいじゃないですかね」


パスタソースのパッケージに食材を充填する機械。

普段何気なく見かける食品でも、製造時には高度な技術が活用されているんですね。

佐々木「商品をパッケージに充填したときに、封をするところに固形物やソースが付着したままだと、適切に閉じないんですよ。今回のパスタソースも固形物が入っているので、パッケージ封入技術がないと難しいです。

これもこだわりの1つなんですが、商品を開発する際、粉末のスパイスをあまり使いたくないんですよ。やっぱり粗挽きがいい。それだと家で調理したときにスパイスがパッと顔を出して、香りも風味もいいんですよ。でも粗挽きにするということは、固形物になるので製造が難しくなるということ。その課題を克服し、食卓での「おいしい」を実現するために、機械の設計から手がけています」

レシピを見ても味の想像がつかない、夢のパスタソース

これまで数々の商品を開発されていますが、米澤シェフのオリジナルパスタソースの開発話があったときの印象はどうでしたか?

菊地「正直難しそうだなと思いました。ヴィーガンは知っていたんですが、プラントベースはきちんと理解はしていなくて。調べてみて今の時代にあったことだと思ったので、そういう取り組みに加われて嬉しかったですね」

プラントベースとヴィーガンはつくり手としてはどんな違いがあるんですか?

菊地「ヴィーガンには満たすべき厳しい基準があるので、原料も限られてきます。プラントベースは植物由来であることが基本的な考え方ですね。今回の米澤シェフのパスタソースはプラントベースと名乗っていますが、ヴィーガン基準にも対応しています」


パスタソースの開発を担当した菊地未紗さん。食品業界一筋で南華園の商品を食べ、味に惚れ込んだことがきっかけで中途入社した。

ヴィーガン商品をつくる上で、難しかったことはありますか?

菊地「やはり旨みを出すのが難しいです。今回のパスタソースだと味が物足りなくならないように、トマトの酸味や甘味を加えて旨みを出しています。なるべく人工的なものは使わず、自然のもので配分を変えて調整しました」

どんな工程でつくられたんですか。

菊地「今回はレシピをいただいていたので、それを元に原料を集め、配合を考えて、製造工程や原料コストの調整を行いながら、試作品づくりをやっていきました。

仕入れ先はレシピごとに変えています。原料そのものの味が影響するので、トマトに関してだと甘みと酸味がいいものを選びました。今回はイタリア産です。国産のものと違って、海外の品種の方が旨み、特に酸味があると思います」

パスタソースならではの工夫はありますか?

菊地「パスタとの絡み方によって味の雰囲気がガラッと変わるので、ソースのとろみ具合を変えて試作を繰り返しました。

とろみは、小麦粉や添加物を入れて調整します。入れすぎると口に残ってしまうので、ほどよい感じに仕上げています」

添加物が入っていることに敏感な消費者もいると思うのですが、開発者としては添加物についてどう考えていますか?

菊地「製造していく上で添加物を加えると品質が安定し、より安全な製品をつくれるというメリットもあるため、バランスを見ながら取り入れることもあります。調味料は旨みを補うために有効ですが、まずは素材の美味しさを生かすことを優先しています。

ちなみに今回のパスタソースの成分表記には『酸味料(一部にオレンジ、りんごを含む)』が表示されていますが、これはわたしたちが添加したものではなく、もともとの原料に含まれていたものです。原料由来の添加物もたくさん存在しているので、原料選びの時点で慎重に判断しています」

開発を進める中で、他の商品との違いを感じることはありましたか?

菊地「やはり有名なシェフの方の原料の組み合わせは斬新だなと。パスタソースに、甘いオレンジピールや甘酒を入れるという発想はありませんでした。スーパーで売られている商品は、原材料を見るとだいたい味の想像ができるんですけど、米澤シェフのレシピはなかなか想像がつかなくて。実際に食べてみると、とてもおいしくて驚きました。社長もびっくりしてましたね(笑)」

想像ができない味だとつくるのも大変そうです。試作はどれくらいされたんですか。

菊地「今回はやはり難しくて、10回くらいですね。通常は2、3回くらいで決まります。わずかな分量の違いや原料を入れる順番でも全然味が違ってくるので、なかなか想像がつかない味だったこともあり、試作は大変でした。商品名が『トマトとケッパーの甘酒トマトソース』なので、ケッパーの形が潰れないように工夫したりと、いろんな配慮をしています」

ようやく完成してみて、どうですか。

菊地「最初に米澤シェフからいただいたサンプル品と遜色ないものができて、安堵しています。原料の組み合わせが斬新で、食べるまで想像がつかない味だと思うので、夢が膨らむパスタソースになったかなと。ぜひみなさんに味わってもらいたいですね」



INTERVIEW & TEXT BY TOMOHIRO NAKATATE
PHOTOGRAPHS BY RYO KUDO

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