4/30まで送料無料
2021.04.06

ヴィーガンも肉好きも1つの食卓に。The Burn米澤文雄シェフが見据える、分け隔てのない食の未来

with who?

株式会社No Code代表

米澤文雄

1980年、東京都出身。高校卒業後、恵比寿のイタリアンで修業し、22歳で渡米。ニューヨークのミシュラン三ツ星店「Jean-Georges」でインターンを経て、日本人初のスーシェフとなる。帰国後、日本国内のレストランで総料理長を務める。「Jean-Georges Tokyo」の日本進出を機に、シェフ・ド・キュイジーヌとして活躍。2018年9月「The Burn」をプロデュースし、エグゼクティブ・シェフに就任。2020年7月には東京・広尾に、自身が手がけるベジタリアン専門店「Salam」をオープン。著書に「Vegan Recipes/ヴィーガン・レシピ」(柴田書店)がある。

「料理とは人を幸せにしたり、楽しく豊かにするコンテンツ」と語る米澤さん。そこには人種や国籍、性別や年齢、食の趣向といった違いは存在しません。一方、さまざまな事情で食になんらかの制約や制限がある人たちもいます。もし友達がアレルギーを持っていたら。もし大切なパートナーが肉を食べられなかったら。それでも一緒に、食事を共にしたい。

そうしていざレストランを探してみると、誰もが我慢をせず一緒に食卓を囲めるお店は意外と少ないのではないでしょうか。そんな現状に対して、シェフとして料理人として、みんなが同じ食卓でごはんを食べられるようにと願い、磨き上げた料理の腕を奮っているのがThe Burnエグゼクティブ・シェフの米澤文雄さんです。

誰とでも一緒に美味しい食事を。ある意味あたりまえすぎて忘れがちな、食べること本来の喜びを思い出させてくれる米澤文雄シェフのお話をお届けします。

「わたしは食べられないけど、あなたは好きに食べてね」を実現する


青山一丁目にある「火の味がするシンプルかつ豪快なグリル料理」を提供する『The Burn』。店内は広々としていて、カジュアルに落ち着いた雰囲気で料理を楽しめる。

The Burnは肉料理をメインとしながら、ヴィーガンメニューも豊富にあります。どのような想いで運営されているのでしょうか。

「食べられる」「食べられない」にはいろんな理由があります。「食べられない」理由はわかりやすいところだと、アレルギー、宗教、地球環境への配慮、動物愛護など。一方で、「食べたいけど、なんとなく嫌煙して食べられない人」もいて、そういう人たちは食べてもいいわけですよ。だったら、いろんな想いをもった人たちが、1つの食卓を囲んでいてもいいじゃないですか。

「わたしも食べないから、あなたも食べないでね」って、いじめている子を一緒にいじめないと仲間外れにされてしまうのと同じ。そうじゃなくて、ちゃんと自分で考えて食べられる、食べられないを決めればいいと思うんですよ。どちらも正しくて、間違っていないことなので。だから、誰もが分け隔てなく集まれるレストランをつくりたかったんです。

分け隔てないというのは、すごく素敵ですね。その中でもヴィーガンに注目された理由はなんでしょうか?

ヴィーガンは動物性タンパク質を取らない人たちなので、食べられない料理が多いんですよね。ヴィーガンの友人から、「米澤さんのお店はステーキがメインだよね。だからヴィーガンの友達とは一緒には行きづらい」と言われたらやっぱり嫌ですよ。そうじゃなくて、「ステーキがメインだけど、ヴィーガンの人たちがきても圧倒的に楽しめるような野菜料理がたくさんあるから、ぜひ一緒にきてよ」って。

実際The Burnでは肉を食べにきている人たちよりも、ヴィーガンの人たちの方がすごく喜んでくれるんです。肉を美味しく食べられるレストランは、焼肉やしゃぶしゃぶなどたくさんあるのに対して、野菜料理をたくさん楽しめるお店って意外とないんですよ。本当に。だから、ヴィーガンの人たちにも美味しい料理を提供できる世の中になればいいなと思って、ヴィーガン料理を提供しています。


The Burnのヴィーガンメニューの1つ、『カリフラワーステーキ カルダモンと自家製アリッサ』。「コース料理に必ず入れてください」とオーダーが絶えないほどの人気料理だ。

米澤さんの著書「Vegan Recipes/ヴィーガン・レシピ」でも触れられている、”Less meat, more vegetable”という考え方にもつながってくるのでしょうか。

これからの世の中を考えたときに、サステナビリティや脱炭素といった地球環境の問題が大きくなっていくことは間違いないでしょう。The Burnは肉をメインとして出していますが、仮に肉を食べてはダメとか食べる量を減らしなさいと言われても、ちゃんと対応できる世の中にしたいんですよ。

そのためにもみんなで野菜の美味しい食べ方を研究して、「こんなに美味しい野菜料理があるなら、今日は野菜だけでもいいかな」と思ってもらえる機会を増やす。その結果、肉を食べる機会が減っていけばいいじゃん、と。そんな提案を料理人からしていけたらと思い、研究を重ねているんです。

“Sustainable Grill Restaurant”が考えるサステナビリティ

The Burnは”Sustainable Grill Restaurant”と表現されています。どんなサステナブルな取り組みをされているのでしょうか。

まだ100%できているわけではないですが、サステナブルと言われるような食材を扱った料理を提供したいと思っています。当然、なるべくそういったものを使うようにしています。例えばお肉だと、経産牛や国産牛など地域の人たちがしっかりと手を組み合って育てている牛を選んでいます。ただ、サステナビリティに関して僕の中でウェイトが大きいのは「人」ですね。

人ですか。

持続可能な職場を目指すことです。具体的には、あんまり無理をしすぎない。継続する一番のポイントは、無理しすぎないことだと思うんです。どんな業種や業態であっても、続けることに意味があるのであれば、なるべく続けられる可能性を探る。細くなったとしても、なるべく長く続けられるのが本当のサステナビリティではないでしょうか。

よく一気にガッとやろうとすることってあると思うんですけど、なかなか続かないでやめてしまうことも多い。そうではなく、細く長く続けられるようにがんばる。結局サステナビリティの肝は、持続可能なことなので。

なるほど。食の分野でサステナビリティときくと、フードロスなどが想起されることが多い気がします。

おそらく大半のシェフが同じことを言うと思うんですけど、レストランのフードロスって意外に少ないんですよ。シェフは食材を使い切る技術に長けているから。あとは食材の必要数と発注数がそこまで大きくぶれないんですよ。もちろん、ゴミを出さないかというと話が違うのですが、フードロスはみなさんが思っているより少なかったりします。


The Burnスタッフのみなさん

先が見えない問題も、楽しみながら答えを見つけていく

米澤さんは医療従事者への食の支援「Smile Food Project」、病気の子どもたちを支援する施設でのレシピ監修、持続的な水産資源の実現を目指す「Chefs for the Blue」など常に新しいことに挑戦されています。COMMEARTHは一人ひとりの「新しいー歩」を応援していきたいと思っていますが、米澤さんが次々と新しいことにー歩踏み出せるのはなぜでしょうか?

僕自身は飽きっぽいんですよ。いろんなことをやりたくなってしまう。自分を忙しくして、常に新しいことをやっていく。すると、さらに新しいことが舞い込んでくるんですよね。

あとほぼ100%、頼まれたことはやるようにしています。そしてやると決めたからには、それを楽しくする。COMMEARTHの取り組みもそうですが、答えがないことも多いけれど、クライアントさんと一緒に出口を見つけていく。すると一緒に楽しく仕事ができるパートナーが増えるので、僕にとってはとてもハッピーなんですよ。

米澤さんの取り組みからは、新しい料理人像が見えてきそうですね。

僕は1人の料理人として、自分が突き進む延長線上にあるものがいいという考えを持っていないんです。僕を含めたいろんな人たちを巻き込んで、螺旋状におかれている網羅されたものの中に幸せを見つけられたらいいんだ、と。だから、僕の答えはたくさんあるんですよ。1つじゃないんです。

螺旋状というのは、どんなイメージなんでしょうか。

いろんな可能性が僕にはあるということですね。例えば、ミシュランの三ツ星をとるのはとても細い道のりです。ふつうはこの道の直線上にあるものが、自分の正解だと思ってこの道だけを歩みます。

一方僕の場合は、いろんな方向から突然ピュっと自分の道に交わってきたものも、一緒に取り組みます。僕を選んで交わってくれた時点で、僕もその道を歩みたくなるんですよ。そして道の先を一緒に見つけていく。その交わりが、ワッとたくさんあるんです。

先ほど料理の文脈で「分け隔てない」ことを話されていましたが、生き方としても実践されているんですね。

そうですね、何かそういう感じもあると思います。

自分の行動こそが世の中を変えるー歩になる

人にも地球にも優しい行動が広まっていくには、何が必要になってくると思いますか。

例えばASC認証MSC認証などのサステナブルな認証を取っている魚とそうでない魚があったとき、みなさんはどちらを食べますか?通常認証されるには承認している団体に、認証料を払う必要があります。価格にその分が上乗せされるので、必然的に認証を取っている魚は高くなってしまう。

これは僕の肌感覚ですが、いい悪いではなく、たぶん日本の多くの人は認証を取っていない魚を食べると思うんです。一方、欧米の人は認証を取っている方にいく人がおそらく多いです。その違いは、地球環境に対するナレッジと想いなんだと思います。

想いというのは?

自分の行動が地球環境の改善に一定、一躍を担っていると思うか思わないか。選挙と同じですよ。「どうせ別に俺の1票なんて意味ないよ」と思うか、「自分の1票がないと始まらない」と思うか。その差です。

すごく説得力がありますね。自分のー歩が大勢にあまり影響がないんじゃないか、と思う気持ちは否定できない気がします。

やっぱり欧米の人たちの多くは、自分の行動がいずれ全てにつながっていくとわかっているんですね。だからこそ、一人ひとりが責任のある行動をとるんだと思うんです。                
僕自身、アメリカに長くいた関係でそういった現場をたくさん見てきました。その経験の積み重ねがあったからこそ、「自分のー歩」が大事だと感じています。日本でもそういうー
歩を踏み出していく人が増えてくると、社会も変わってくると思いますよ。


ニューヨーク滞在時の米澤さん

まさにCOMMEARTHが実現したいことそのもので、とても勇気をもらえます。最後に、これからの世の中をよくしていきたいと思っている人たちに伝えたいことはありますか?

全てのことに通ずると思うんですけど、なるべく目の前のことを楽しめる状況を自分でつくってしまうこと。例えば、「ヴィーガンコースをつくってほしい」と依頼があったときに、「野菜だけのコースなんてつくれません」と言った瞬間にもう終了なんですね。

そんなときに、「今まではやったことないけど、この食材を使ってやってみよう」とはじめてみることこそが、ディスカバリー、発見なわけですよ。

これ、必ず前向きに取り組んだもん勝ちなところもあると思います。無理って言うのは簡単なんですよ。できないのは簡単なので。何か問題点があったときに、いかにそれを楽しみながら達成するプロセスを味わうかが大事なんだと思います。


INTERVIEW & TEXT BY TOMOHIRO NAKATATE 

Share