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2022.03.19

私たちは無数の命のつながりの上に生きている。モデル・NOMAさんが気づいた“命の糸”

with who?

モデル・アーティスト

NOMA

佐賀県出身のモデル、アーティスト。生命や宇宙の不思議に惹かれ、自然遊びに夢中な幼少期を送る。大学では世界情勢などグローバルな学びを深めながらモデル業を始め、各地を巡りながら執筆もスタート。ファッションからビューティー、時に自然科学の案内人としてサイエンスまで幅広いジャンルでメディアやイベント等に出演。2012年より廃材を使った作品創りを始める。グリーンピースオーシャンアンバサダー、環境省森里川海アンバサダーとしても活動中。感じて、知って、考えて、自分の感性で触れた世界を表現したり、シェアすることが好き。http://noma-official.com / instagram:@noma77777

「感じて、知って、考えて」

日常の中でこのプロセスを大事にしているというNOMAさん。インタビュー前編では、これらの行為がいかに地球のことを知る手助けをし、私たちの価値観を豊かにしてくれるのかを語ってくれました。

地球の壮大なつながり合いを知れば知るほど、「私たち人間にはどんな“つながり”をつくることができるだろうか」という問いが湧き出てきます。

後編となる本記事ではさらに、私たちが地球に対してできること、地球との調和のあり方へと話が広がっていきます。

人間から自然界に、もっと元気を

サイエンスとアニミズム、両方のバランスが大事とのことでしたが、そうした分断されがちなことを紡ぎ直していくために、私たちにはどんなことができると思いますか。

時代の流れの中で分断されてしまったもので、今再生が必要だと思うのは命の循環です。果てしなくつながり合っている中で調和し巡っていた命の循環を、特にここ数十年、人の都合で分断してしまったのではないかと感じています。

『WE EARTH』の虹の章で話を伺った京都大学名誉教授で森里海連環境学の提唱者である田中克先生によれば、日本は恵まれた森を出発点に3万本以上の河川が流れ、森・里・川・海と素晴らしい循環が起こっているそうです。そんな環境で私たちのご先祖様は、今日に至るまでずっと命を循環させ、森里川海のあいだで自然環境を紡ぎながら暮らしてきました。里というと田舎を連想する方もいると思いますが、東京などの都市もかつては里山。それが今では大地はアスファルトに覆われ、命の循環が遮られることが多くなっています。

いかに都市の中から命のめぐりを再生していくかは、私たち全員が考えなきゃいけないことだし、できないことじゃない。人間が培ってきた技術や知見を持ち寄って、森と海のつながりの橋渡しをしていくことが、これからの自然と人との関係性において取り戻すべきことだと思うんです。

人間だからこそできることがあると。

サイエンスやテクノロジーってどうしても環境負荷を高めた要因として語られることがあると思うんです。でも、それら自体が悪さをしているわけではありません。大事なのはどんなビジョンで、どういう使い方をするか。つまり、人間次第なんですよね。

だからこそこの世界において、人間にしかできないことがあるわけじゃないですか。地球のエコシステムを再生していくことにサイエンスやテクノロジーを使うことは、私たち人間にしかできないこと。自然界の一部である人間側から、自然界にもっと元気を与えられることができたら素敵だなと思います。

暮らしに自然のリズムを取り戻す

『WE EARTH』を通じて地球の緻密なつながりやバランスに気づいたからこそ、その循環の中で私たち人間がどんな役割を果たすべきなのか考えさせられます。

自然界に対して人間にはもっとできることがあるのではないかと、最近ずっと考えています。例えばここ数年、アフリカではサバクトビバッタが大発生して、農作物に深刻な被害が出ています。国際連合からも警告が出ている状況で、いかにこのバッタを駆除するかが議論されているとニュースで知りました。

シンプルに考えれば、殺虫剤を撒いて駆除することになると思います。でも視点を変えて考えてみると、サバクトビバッタってすごく長い距離を跳ぶんですよね。ということは、かなりいいタンパク質を持っているはず。殺虫剤を撒いてお陀仏にして、良質なタンパク質をなくすのはもったいないし、命の循環の観点からは殺虫剤を撒かれた後の環境は農家さんにとってもよくないだろうし、何よりサバクトビバッタも無念だと思うんですよ。

たしかに…。

すると、殺虫剤を撒いて駆除するってすごくアンハッピーな解決方法だと思い始めたんです。じゃあ私たちに何ができるかと考えると、まずバッタの生態をよく調べることではないかと。実際に調べてみると、サバクトビバッタは夜お気に入りの植物の側で集団で寝るそうなんです。この習性を利用して何かできそうじゃないですか。

さらに紐解いていくと、バッタを駆除せず何かしら食品や衣服にするなど、循環させてくれる技術をもった研究員や技術者に協力してもらえたら解決策が出てきそうです。事態は急を要するので、どういうシステムだったら素早く現地に行けるかを考えていくと、協力者のスケジュールにある程度ゆとりがないと難しい。日々通常業務でいっぱいな状況では、突発的に発生したサバクトビバッタに対応するためにアフリカに行くのは現実的ではないですよね。

そう考えると、スローダウンすることの必要性を感じました。もっと自然界のリズムに寄り添えるような余白をつくっていけたら、調和の助けができるのではと思ったんです。

バッタの駆除の話からスローダウンにつながるのはおもしろいですね。

地球のめぐりや自然界の摂理に合わせていくことを、いかに人間社会のリズムの中にも刻んでいけるか。私たちの生活自体にそうした“刻み”を取り入れていけるかは、今世の中で起きているいろんな課題を解決するためにも大切です。

例えば飲食店では、どの季節に行っても同じメニューが出てくることが当たり前になっていますが、本来は旬の食材を地球のめぐりに合わせていただいていれば、フードロスや環境負荷も減っていくはず。でもそれを実現するためには、いつ行っても同じメニューがあることを当たり前のように望む、私たち客側のマインドを変えていくことも大事です。

北海道から届いた旬の食材とNOMAさん(写真提供:NOMA)

春の七草や中秋の名月にお団子を食べる習慣など、すでに取り入れている自然のリズムから気づけることもありそうですね。

日本の歴史を紐解いていくと、いかに暮らしの中で自然を愛で、自然遊びを楽しんできたかを感じます。植物への向き合い方一つとってもそうですし、月の満ち欠けと暦についてもそう。自然界のリズムに沿った暮らしを学ぼうと思ったときに、西洋の習慣など日本の外をみがちですが、私は日本の歴史をもっと辿っていくことも大切にしたいです。

日本では古来より八百万の神を生活の中に取り入れ、自分たちを自然の一部と捉える自然観の中で、代々命を紡いできました。日本ならではの植物や空を見る習慣、食との向き合い方があって、とても興味深いんですよね。土地によって自然のリズムは違いますし、暮らしている大地の一部を成しているのが人間。だからこそ、大地とつながったリズムを刻むことを意識したいですね。

玉響のひとときを生きる

NOMAさん自身がこの世界を知ることに喜びやワクワクを感じていることが、『WE EARTH』やサバクトビバッタのお話からとても伝わってきました。最近知った喜びは何かありますか。

すごくいっぱいありますね(笑)。その中でも一番の喜びは、実は私、今、妊娠後期なんですよ(編注:取材時点)。まさか地球に関する本をつくりながら、自分の中で命を育むことになるとは思っていませんでした。実際に経験して学びになったのは、命のつながりです。妊娠する前から、家族との血のつながりを通じて感じることはありましたが、自分のお腹で命が育っていく中で感じることとはまた違いました。

まず何より、書籍の制作などここ数年で一番忙しい時期に身ごもったことが、お腹の子に対して本当に申し訳なかったんです。病院に検診に行くたびに、「ちゃんと生きてるのかな…」と心配していたんですが、そんな私の不安をよそにモニター越しに見える子どもは「ウェーイ」って万歳してて。その様子を見て、涙がボロボロと出ちゃって…。私たちは自分たちの意思でつながろうとすることもあるけれど、命のつながりってそれ以上の強さやエネルギーを持っているんだと感じました。

まだうまく言葉にできないんですが、私にとってその気づきはすごく大きな学びです。つながり合っていながらも、相手のことを完全に想像できると思わないほうがいいし、そういう存在同士が無数につながり合っている世界に生きているんだなって。『WE EARTH』の海の章で触れていますが、生命誕生の歴史を振り返ると、私たちの祖先にあたるバクテリアがその当時いた他の大量のバクテリアを死滅させ、生き抜いた結果紡がれてきた生命の糸が今に続いている。そのことを考えると、世の中いろんなことが起きているけれど、一度立ち止まってみて、自分が今この地球に生きていることに対する謙虚さや喜びを改めて咀しゃくできると思うんです。

歴史を振り返ると、私たちの命が誕生するまでに紡がれてきたものを感じますし、子どもが生まれると命のめぐりが続いていくことを実感しますね。

そうやって振り返ると、私たちの今って“玉響(たまゆら)のひととき”じゃないですか。一瞬で“命の糸”の橋渡しをお互いにやっている。そう思うと、いかにちゃんと光っている綺麗な糸を次の世代に残していくか、私たちが亡くなった後もその糸が残ることを忘れずに物事を選択していくことがすごく大切だと感じます。

今私たちが直面している社会や環境の問題は、シリアスなことも多いです。でも例えば脱炭素に関しても、CO2を基準まで減らしたら「解決」とはなりません。『WE EARTH』の空の章でも炭素の循環について触れていますが、単純に「炭素=悪者」とする社会もおかしい。でも、ニュースなどで脱炭素のワードだけが目立つようになると、炭素がよくないんだなという印象になってしまうじゃないですか。

だからこそ全体像を見ることが日常になっていないと、どうしても断片的なものだけで判断してしまい、「CO2削減できました」で終わってしまう。でもそれって果たして今後の地球環境を、バランスのいい状態のまま維持していけるのかと考えたときに、残念ながら難しい。地球の全体像を知ることは絶対に忘れないでいたいですね。

事態が深刻だと感じるほど、解決してくれる答えにどうしても飛びついてしまいますよね…。

そうなんですよね。あと同時に大事にしたいのが、悲観的になりすぎないこと。例えばセミは幼虫として地中で約7年間過ごし、成虫として地上で7日間だけ思いっきり鳴いて生命を終えます。数字だけ見れば日の目を見るのはわずか7日間ですが、セミはきっと悲観してないと思うんです。命をまっとうしている。だから私たちも、解決が難しい課題に直面して途方に暮れるのではなく、命の素晴らしさを感じることも大事なんじゃないのかな。そうしたことも自然界から教えてもらうことができます。

私が「感じて、知って」を大事にしているのは、人間の幸福の価値や足るを知るラインがどこなのかを考えたときに、地球と調和しているかどうかが大事で、調和するためには地球を感じることがスタートだからなんですよね。社会システムの選択やどんなお金の使い方をするのかって、一人ひとりに宿っている幸福感や感性とリンクしていると思うんです。だからこそ、地球と調和していないと、地球に対することが抜け落ちてしまいます。

そして調和していくと、「足るを知る」ことが本当に大事だと気づきます。足るを知らないと、「もっともっと」となるじゃないですか。もちろん成長は大事ですが、地球との調和とセットで考えることが大切だと思うんです。

成長だけを追い求めてしまうと、どこかで何かのバランスが崩れてしまうと。

そう思います。今直面している環境問題は、私たち人間が経済成長を追い求めた結果起きていることです。環境問題を改善するためのキャッチフレーズに脱炭素と言いがちですが、結局炭素の循環バランスが崩れているのも、私たちが成長を追い求めたからですよね。

今の地球はたまたま私たちにちょうどいいバランスで存在してくれていますが、過去の営みが続いてきたから今があるのであって、私たちがつくったわけじゃない。だからこそ命の営みを感じながら、自分たちができる範囲で命のいいめぐりをつくっていく。そういう俯瞰的な視点を忘れないためにも、『WE EARTH』がきっかけになってくれたら嬉しいですね。


取材・執筆:中楯知宏 
プロフィール写真:akisome 
提供写真:フォトグラファー 小渕真希子、ヘアメイク 長澤葵

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